九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)

研究室紹介

脳循環研究室

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脳循環代謝研究室は、1972年頃に藤島正敏先生(後に第二内科 第六代教授)と山口武典先生(後に国立循環器病研究センター名誉総長)を中心として創設されて、脳卒中の専門診療と研究を開始するようになりました。当時は、脳卒中の多くを脳出血が占めており、診療の大部分を脳外科医が担っている時代でしたので、画期的なことであったと思います。

その後、時代を経るにつれて脳卒中として脳出血が減る一方で、脳梗塞が増えてきました。また画像診断技術また抗血栓薬や生活習慣病に対する内科治療の発達に従い、もはや脳卒中の超急性期・急性期から慢性期にかけての医療の主体は内科治療となってきています。さらに超高齢化社会の到来で、てんかん・認知症・パーキンソン病などの神経common disease、また悪性疾患や膠原病などを併発・合併する脳卒中患者も多くなってきており、単に脳卒中のみを診療する姿勢では不十分となってきています。脳卒中超急性期から回復期・慢性期にかけての症状増悪の予防・機能転帰改善や悪化予防・再発予防に対して、脳卒中だけでなく、その背景にある危険因子や合併症に対していかに治療介入していくが重要となってきます。そして脳卒中を発症する前から、全身血管病を管理して脳卒中発症そのものを予防していく姿勢が非常に重要です。そのためにも脳卒中を単に神経学の観点からとらえるのではなく、内科全般の幅広い知識の上に全身血管病の観点でとらえていく必要性があります。

さて、脳卒中の超急性期治療は近年、劇的な変化をとげました。脳梗塞に対して2005年にrt-PA血栓溶解療法が日本でも開始されました。2010年より血栓回収カテーテル治療が認可され、その後も血管内治療デバイスの発展とともに超急性期機械的血栓除去術に治療成績も向上してきています。しかしながらこれらの超急性期治療を受けても30〜40%の脳梗塞患者は3ヶ月後に自力歩行ができていない現状があります。また超急性期脳梗塞の治療の恩恵をうけることができる患者も急性期脳梗塞患者の約1割に留まっています。そして脳出血に対する急性期治療については急性期の積極的な降圧療法の知見が集積されて血圧管理の進歩はありますが、依然として有効な治療法が確立していません。脳卒中は死因の第3位、身体障害・寝たきり・訪問介護の原因の第1位の疾患であり、患者家族や介護者だけでなく社会経済学的にも多大な負担がかかる疾患です。そのため脳卒中医療体制の整備と新規治療法の開発が喫緊と課題と考えています。

そこで、現在100名を超える研究室メンバーが急性期地域中核病院や回復期リハビリテーション病院で、内科全般の幅広い知識・経験の上に専門性をもって活躍しています。最前線で脳卒中救急診療にあたる者、脳血管内カテーテル治療を専門とする者、リハビリテーションを専門とする者、老年病・認知症医療を専門とする者などがいますが、それぞれの専門だけでなく全身を診ながら、医療レベルの向上や多様化に合わせてさらなる専門領域の強化をはかりお互いに切磋琢磨しています。

また脳卒中の病態解明そして脳卒中の新規内科治療法の模索・開発のために臨床研究と基礎研究を続けてきています。急性期医療で得られた貴重な臨床情報を前向き多施設共同研究である福岡脳卒中データベース研究(Fukuoka Stroke Registry: FSR)(http://www.fukuoka-stroke.net)として登録し追跡情報と合わせて、脳卒中医療についての情報発信を行っています。本研究は2007年に開始され、2019年5月末までに登録症例数は16,000を超え(追跡率91%)、国内外含め精度の高い大規模脳卒中データベースとなってきています。また本研究の特徴は全例で血漿やゲノムを保存していることです。このデータベースを用いてこれまで脳卒中重症度・神経機能増悪や改善・機能転帰に関連する種々の因子や脳卒中に関連するバイオマーカーを同定し、その成果を国際一流誌に数多く報告してきています。そして当研究室では実臨床や臨床研究で生じた疑問や課題を、動物実験や分子細胞生物学的手法研究により解明する努力を続けてきています。近年は、Neurovascular unitの立場から脳梗塞発症後の組織障害や修復過程を、細胞・分子レベルで細かく見直し再生医療への糸口を模索する研究を展開しています。また心血管病と活性酸素種に関する研究や脳梗塞後の炎症応答に関する研究などでは、研究室メンバーにより世界トップレベルの論文報告を行ってきました。臨床での疑問点を解決するような基礎研究も行い、その成果を臨床に還元して、脳卒中医療に貢献していきたいと考えています。

超高齢社会では、地域医療では脳血管障害ならびにその周辺疾患の診療に長けた医師の需要が急速に増加してきています。また2018年12月には脳卒中・循環器対策基本法が制定され、脳卒中診療体制の整備が求められてきています。当研究室が果たすべき責務は大きく、地域脳卒中診療を担える人材の育成とともに、日本における脳卒中診療・研究のモデルとなるべく情報を発信し続けたいと考えています。

(文責:脇坂義信)

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