九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)

研究室紹介

腎臓研究室

腎臓研究室のホームページへ

鶴屋 和彦

我が国の慢性維持透析患者数は増加の一途をたどり,2014年末で32万人を超え,国民400人に1人の割合まで増加しています.膨大な潜在的患者数の存在が推定される慢性腎臓病(CKD)の進展を抑制し,透析導入を阻止することは医療経済的にも社会的にも重要な課題であり,腎臓専門医の役割は極めて重要となっています,しかしながら,全国的に腎臓専門医は不足している状況で,新たな腎臓専門医の育成が急務と考えられます.
 九州大学腎臓研究室は,第二内科(現・病態機能内科学)のなかの1つの研究室として昭和51年に創設され,昨年,40周年を迎えました.現在,腎臓研究室に所属している医師の総数は150人を超え,関連施設も20施設を超えるまで大きくなっています.

当研究室は,腎臓病患者の診療について,検尿異常から透析・移植まで,幅広く診療することを理念としています.この理念は関連病院全体で共有しており,ほとんどの関連病院で同様の診療ができるのが特徴です.特に,内科的な領域だけでなく,血管内カテーテル挿入術,バスキュラーアクセス作製術,経皮的カテーテル血管形成術,腹膜透析カテーテル挿入術など外科的な手技,さらには腎生検の組織採取,光顕,電顕,免疫抗体法などの試料作製や診断などの病理学的な領域まで,全て研究室のなかで行っています.また,腎代替療法として血液透析,腹膜透析,腎移植の全てにおいて全国トップクラスの患者数を診療しており,充実した臨床を行っています.
 研究面でも,臨床面の理念である検尿異常から透析・移植までを実践し,幅広い領域の研究を行っています.特に,CKDの発症・進展機序および合併症(血管石灰化,腎性貧血,認知機能障害,脳萎縮など)の機序の解明を主題として,基礎研究と臨床研究に取り組んでいます.

基礎研究では,腎障害進展における酸化ストレス,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAAS)系,交感神経系の関与についてそれらの抑制薬や腎交感神経切除(denervation)の有効性を明らかにし,その分子機序の解明を進めています.また,CKDに伴う骨代謝異常と血管石灰化について酸化ストレスやRAAS系の関与について研究し,特に,血管石灰化についてはリンの影響が重要で,リン制限やリン吸着薬により石灰化が抑制されること,最近では,低リンに加え,たんぱく質摂取も石灰化抑制には重要で,Fetuin-Aの抗石灰化作用を明らかにしています.また,CKDに伴う脳機能障害について,5/6腎摘CKDマウスに認められる高次機能障害が抗酸化薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬により抑制されることを明らかにしました.また,最近注目されているオートファジーについても,糸球体障害や血管石灰化との関わりについて研究しています.
 臨床研究では,共通の診療方針に基づいた専門的腎不全医療を提供しうる腎臓専門医が診療に従事する北部九州医療圏の施設を対象に,CKDデータベース(Fukuoka Kidney disease Registry; FKR)の構築を行っており,現在までに4,000例を登録しています.CKD患者は,高血圧や糖尿病など生活習慣病とも密接な関連性を有することから,脳卒中・虚血性心疾患など動脈硬化性合併症の発症リスクも高く,CKDにおける有病率・発症率・死亡率およびその危険因子を明らかにすることは,これら動脈硬化合併症の予防・治療の向上にも寄与するものと考えられます.CKD患者を対象とする大規模データベースを構築することにより,CKD診療の問題点を抽出し,CKD患者の合併症や予後に関する要因解析を行うことができます.また,追跡調査を行い,腎不全進展阻止および治療効果や合併症に関わるバイオマーカー同定やゲノム解析を行うことで,科学的根拠に基づく医療(EBM)へつながる質の高い臨床研究の展開,さらには新たな創薬研究へとつながる研究基盤の構築が期待できます.

また,CKDの発症要因は免疫学的要因および生活環境要因,遺伝要因など多岐に渡り,これらが相互作用した結果,発症・進展すると考えられます.CKDの原因,増悪因子,予後規定因子を明らかにするためには,日常診療で産み出される膨大な臨床情報を体系的にデータベース化することが重要となります.データベース化を通して,個別の症例のみでは判然としない事実を明確化することが可能となり,CKD発症,増悪のメカニズムの解明,さらには疾患の予防・治療研究へとつなげることができることが期待できます.

その他,血液透析患者のコホート研究(Q Cohort Study)や血管合併症に関する研究(VCOHP Study)などのデータも集積され,成果が出始めています.当研究室では,初代研究室主任の藤見惺先生からご教示いただいた腎臓内科学・透析医学を大切に踏襲しており,そのひとつに,「透析療法はゆっくりと長くかけて行うべき」という教えがあります.すなわち,全国のほとんどの施設が透析時間は4時間かそれ未満であるのに対し,当研究室では,原則として5時間以上の透析を継続しています.以前より,この治療方針が本当に患者さんの予後やQOLを改善するかどうかということを客観的に示す必要があると考えていましたが,最近ようやく,Q Cohort Studyのデータの解析により,5時間以上の群の予後が良好であったことが示され,学会で発表致しました.また,透析患者の脳萎縮についてVCOHP Studyのデータを解析し,血液透析のみならず,腹膜透析患者においても脳萎縮が急速に進行することを明らかにしました.その他,血管石灰化の進行が保存期CKD患者より透析患者では明らかに速く,一方,血液透析患者と腹膜透析患者では同等であることもわかりました.

今後もこれらのデータから導かれた結果より,ランダム化比較試験や基礎研究などで検証していき,新しい知見を見出すことを目的に,診療・研究を継続していきたいと思います.

  • 医学生・研修医の方へ
  • 研究室紹介
    • 消化器研究室
    • 脳循環研究室
    • 高血圧・血管研究室
    • 腎臓研究室
    • 糖尿病研究室
    • 内分泌研究室
    • 肝臓研究室
    • 久山町研究室
  • 関連病院・協力病院
  • 九州大学病院
  • 九州
大学医学部大医学院医学系学府大学院医学研究院

pagetop

Copy Right © 2015 Second Depertment of Internal Medicine Kyushu Univercity Hospital