九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)高血圧・血管研究室

臨床研究 RESEARCH

FHC研究

心血管病・認知症の発症予防を目指した家庭血圧測定に関する研究
―福岡高血圧コホート研究:Fukuoka Hypertension Cohort (FHC) Study―

研究目的 本研究では、外来通院中の高血圧患者を対象に診察室血圧に加え家庭血圧を測定し、心血管病・認知症発症予防につながる最適な家庭血圧測定方法を検討する。
また、サブ解析として、外来並びに家庭血圧値の血圧変動性や血清尿酸値と心血管病発症、認知機能低下との関係を検討する。
研究の背景と意義 高血圧患者数は現在4300万人に達し、国民全体の約3分の1を占めている。特に、高齢者高血圧は70歳以上では70%以上にも達し、年齢とともに高血圧患者の割合が増加している。
今後、わが国の高齢化は更に進行し、高血圧に焦点をあてた心血管病、認知症の対策は喫緊の課題である。
心血管病発症の予防には、血圧を含めた心血管病の危険因子をコントロールすることが重要である。
ガイドライン等では、診察室血圧だけではなく家庭血圧測定の重要性が示されているが、家庭血圧測定方法の標準化は必ずしも十分ではない。
2009年に高血圧学会より発表されたガイドライン(JSH2009)並びに2011年発表の「家庭血圧測定の指針」においては、家庭血圧測定方法は、1機会1回以上(1~3回)であまり多くの測定頻度を求めてはならないとなっている。
2014年4月発表のJSH2014では、1機会原則2回測定しその平均値を使用することを提唱している。
一方、1回のみの測定の場合には1回のみの血圧値を用い、もしも測定者が自発的に3回測定した場合は3回の測定の平均値とすることも可とし、1機会に4回以上の測定は勧めないとしている。
高血圧治療の最大の目的は、高血圧に伴う心血管病発症を予防することにあり、心血管病発症予防のための最適な家庭血圧測定方法の検討は重要な課題である。
また、最近血圧の変動性も心血管病発症に関係することが報告されている。
更に、血圧以外の心血管病発症の危険因子として、糖尿病、脂質異常症、喫煙、加齢、肥満などに加え、高尿酸血症も注目されてきている。
認知症には、大きくアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の2つの病型がある。
久山町研究の認知症罹患率から推定した全国の認知症の高齢者は、2012年には20年前の約6倍に相当する約550万人に達し、今後さらなる増加が懸念される。
原因の一つとして高血圧が大きく関与していることが示唆されており、血圧の適正な評価と管理が認知症発症予防に貢献する可能性が高い。
以上の様な状況を鑑み、本研究では、外来通院中の高血圧患者を対象に診察室血圧に加え家庭血圧を測定し、心血管病・認知症発症予防につながる最適な家庭血圧測定方法を検討する。
さらに、サブ解析として、外来並びに家庭血圧値、血圧の変動性や血清尿酸値と心血管病発症、認知機能低下との関係を検討する。
被験者の選択あるいは対象 目標症例数:外来通院中の高血圧患者5000症例
スケジュールあるいは研究期間 患者登録は、倫理審査委員会承認日から約3年とする。その後、5年間の追跡調査(計8年間)を行う。2019年4月1日から2024年3月31日まで研究機関の延長を行った。
従って、本研究の研究期間は、倫理審査委員会承認日~2024年3月31日とする。
研究方法
1)同意取得、臨床情報取得、アンケート調査、認知機能調査に関しては、各施設で実施または事務局より担当者(医師または臨床研究コーディネーター)が施設に伺い実施する。登録時と5年後の2回施行予定
2)家庭血圧測定データを自動的にサーバーに転送する3GH通信対応の血圧計(HEM-7251G)を貸与し、次回受診時までの1ヶ月間、朝と就寝前の1日2回、各2回ずつ血圧測定を行う。登録時と5年後の2回施行。
3)高感度CRP(血清)、尿中NA、K、クレアチニン、尿酸、微量アルブミンは特定の業者に外注検査として依頼する。費用は研究費より算出し患者負担はない。
4)心電図、胸部X線検査は登録時と5年後の2回行う。
評価項目 主要評価項目:家庭血圧測定方法(1機会に2回血圧測定し、1回目のみの血圧値と2回平均の血圧値)の心血管病、認知症発症予測能の検討
副次的評価項目:

1)診察室血圧と家庭血圧の心血管病発症予測能の比較検討

高血圧患者において、診察室血圧と家庭血圧の心血管病発症予測能を比較検討する。

2)血圧値と認知機能の検討

診察室並びに家庭血圧値を用いて認知機能との関係を検討する。

3)血圧変動性と心血管病発症の関係

家庭血圧測定値を用いて、血圧の日間、週間などの変動性と心血管病発症との関係を検討する。

4)血清尿酸値と心血管病発症の関係

心血管病発症と血清尿酸値との関係を検討する。

5)血清尿酸値と認知機能の関係

認知機能の低下と血清尿酸値との関係を検討する。

6)血清尿酸値と認知機能の関係

認知機能の低下と血清尿酸値との関係を検討する。

7)家庭血圧測定のアドヒアランス

1日2回、毎回2回の血圧測定遵守率を算出し、アドヒアランスに影響する因子を検討する。

8)北部九州高血圧患者の実態調査

臨床情報、聞き取り調査などより北部九州高血圧患者の降圧薬内服状況、血圧コントロール状況、心血管合併症、こころの健康状態などの実態を検討する。

9)高血圧患者と非高血圧患者の比較検討

非高血圧者との実態調査の比較により、高血圧者の血糖値、コレステロール値、睡眠時間、こころの健康状態など高血圧者の特徴を明らかにする。
研究組織 ●研究責任者:
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野 教授 北園 孝成
●研究分担者:
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野 准教授 松村 潔
九州大学医学部医学研究院附属総合コホートセンター 教授 二宮利治
九州大学医学部医学研究院附属総合コホートセンター 准教授 秦 淳
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 講師 大坪 俊夫
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 助教 後藤 健一
九州大学医学部医学研究院環境医学分野 テクニカルスタッフ 坂田 智子
●共同研究者:
社会医療法人製鉄記念八幡病院 副院長 土橋 卓也
独立行政法人国立病院機構九州医療センター 内科医長 冨永 光裕
一般社団法人日本海員掖済会門司掖済会病院 院長 阿部 功
日本赤十字社今津赤十字病院 院長 藤井 弘二
公立学校共済組合九州中央病院 内科部長 鍵山 俊太郎
独立行政法人国立病院機構大牟田病院 内科医長 赤崎 卓
医療法人博愛会哲翁病院 院長 哲翁 正博
藤島クリニック 院長 藤島 八重
ふくどめ内科 院長 福留 雄司
尾中病院 理事長 尾中 宇蘭
かわさき内科循環器科クリニック 院長 川﨑 純也
福岡歯科大学医科歯科総合病院 講師 寒水 康雄
あらせ内科 理事長 荒瀬 高一
公立大学法人九州歯科大学病院 講師 福原 正代
公益社団法人久山生
活習慣病研究所 代表理事 清原 裕

NNR研究

職域集団における生活習慣病の危険因子および臓器障害に影響を及ぼす因子の検討

はじめに 高血圧は心血管疾患の重要な危険因子の1つですが、食生活の欧米化に伴い、生活習慣病(肥満、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症)や睡眠時無呼吸症候群が増えています。これらをいかに抑制するかが社会的にも大きな課題となっています。また血圧の変動も将来の心血管病の発症に関連している可能性があります。特に若・中年期の生活習慣病や血圧の変動の異常を改善することは、将来の脳卒中や虚血性心疾患等の心血管病の発症を予防するために非常に重要です。若・中年期の生活習慣病の治療・管理状況、血圧の変動を調べ、現状の問題点や今後の課題を明らかとします。また、生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群等の相互関係を調べ、今後の心血管病の予防・管理に役立てます。
対象 西日本鉄道株式会社従業員の中で、2005年1月1日から2018年12月31日までに定期健康診断を受診された約7000人を対象とします。
研究内容 定期健康診断結果を分析し、現在および過去約10年間の生活習慣病(高血圧、脂質異常証、糖尿病、冠動脈疾患、脳血管障害)や血圧の変動性、睡眠時無呼吸症候群、尿酸値や肝機能の管理状況を把握し、現在の生活習慣病に関連する問題点や今後の課題を明らかとします。また、生活習慣病の危険因子とともに、腎障害や動脈硬化の進展等の臓器障害(心電図異常、冠動脈疾患、脳血管障害)に影響を及ぼす因子を明らかとし今後の心血管病の予防や管理に役立てます。
研究では、定期健康診断を受診された方の下記のデータを収集し解析します。
① 年齢、性
② 身体計測値:身長、体重、腹囲、血圧
③ 血液検査:血算(白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数)、生化学(総蛋白、アルブミン、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、カルシウム、総ビリルビン、AST、ALT、ALP、γ-GTP、総コレステロール、中性脂肪、血糖、ナトリウム、カリウム、クロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール)、高感度CRP、HbA1c
④ 検尿(蛋白、潜血、糖:試験紙法、定性)
⑤ 心電図所見(心拍数、SV1+RV5)
⑥ ホルター心電図
⑦ 心臓超音波検査
⑧ 頸部超音波検査
⑨ 運動負荷心電図検査
⑩ MRI所見
⑪ 睡眠時無呼吸症候群の評価結果(Apnea-Hypopnea Index、Epworth Sleepiness Scale)
⑫ 既往歴、服薬歴
⑬ 生活習慣:喫煙、飲酒習慣
また、九州大学で匿名化されたデータを用いて解析します。対象者の方の希望があれば、九州大学への情報提供を停止することができますので、下記連絡先までご連絡ください。
個人情報の管理について 個人情報漏洩を防ぐため、個人を特定できる情報を削除し、第三者が個人情報を閲覧できないようにしています。また、本研究の実施過程およびその結果の学会や論文等での公表の際には、個人を特定できる情報は一切含まれません。
データの二次利用について この研究において得られたあなたのデータは原則としてこの研究のために使用し、研究終了後に、九州大学大学院病態機能内科学分野において、同分野教授・北園孝成の責任の下、10年間保存したのち、研究用の番号等を消去し廃棄します。データの二次利用は行いません。
情報の公開について 対象となることを希望されない方は、下記連絡先までご連絡ください。
また、対象者の方のご希望により、この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障が無い範囲で、この研究の計画書や研究の方法に関する資料を入手または閲覧いただくことができます。資料の閲覧や、個人情報のうちご本人に関するものについて開示を希望される方は、本研究に関しての連絡先 (研究責任・分担医師) にどうぞお申し出ください。他の研究機関に提供される情報はありません。
研究期間 調査・研究を行う期間は、2024年3月31日まで
医学上の貢献 職域集団の健康管理状況の現状を解析することにより、若・中年期の職場全体のデータとして、保健指導に直接役立てることができます。
研究機関 九州大学大学院 医学研究院 病態機能内科学 高血圧・血管研究室
研究機関長:北園 孝成 (医学研究院 病態機能内科学 教授)
研究責任医師:後藤 健一 (病院 腎・高血圧・脳血管内科 講師)
研究分担医師:坂田 智子 (医学研究院附属総合コホートセンター 助教)
連絡先: 〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1
     TEL: 092-642-5256、FAX: 092-642-5271
共同研究機関:
西日本鉄道(株)人事部安全衛生課
研究分担医師: 茨木 愛 (産業医)
西鉄人事サービス㈱ 安全衛生事業部 健康管理センター
研究分担者: 近藤 博明 (健康管理センター所長)
連絡先: 〒812-0011 福岡市博多区博多駅前三丁目5番7号
     西鉄人事サービス株式会社 安全衛生事業部
     健康管理センター
     TEL: 092-734-1168、FAX: 092-733-322
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