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入局後の方針(概略)


2年間の初期研修が終了すると、いよいよ内科専攻医の研修がはじまります。病態機能内科学脳循環研究室では、内科専攻医研修と平行して脳卒中をはじめとする神経救急疾患について研修し、専門領域の知識や技術を深めていきます。



新専門医制度での内科専攻医研修にむけて初期研修医のうちにしておくことは?

新専門医制度では初期研修医の2年間の後に、内科専攻医として3年間の研修期間があります。内科専攻医の3年間では、内科70疾患群のうち56疾患群から少なくなくとも1症例ずつ計160症例以上を専攻医登録評価システムのJ-OSLERに登録する必要があります。ただし160症例の半分である80症例は初期研修医で担当した症例を用いることができます。そのため、初期研修医の期間中に56疾患群で少なくとも1例ずつ経験していれば、残り(160-56=104)の症例は将来専門としたい分野での症例を登録してもよいかと思います。それゆえに初期研修医の期間中は内科を幅広く研修した方が良いかと思います。

一方、症例の登録だけでなく、専攻医2年目末までに内科各分野から計29編(外科紹介例2例・剖検症例1例を含む)の病歴要約を作成する必要があります。このうち14編は初期研修医期間中の症例を用いることができますが、残り15編は内科専攻医中に担当した症例を用いる必要があります。私達、脳循環代謝研究室が所属している病態機能内科学(旧第二内科)は内科の幅広い分野を担っている総合内科ですので、内科専攻医期間中に大学病院また関連の基幹病院・連携施設において脳卒中の専門研修を行っている際も、各診療グループの連携をいかして多彩な疾患の症例を経験することができます。病歴要約のための総合内科2例、消化器(消化管)1例、循環器(虚血性心疾患・血圧異常・心不全)2例、代謝(糖尿病・糖尿病の慢性合併症)2例、腎臓2例、神経2例、救急2例、呼吸器(院内肺炎)1例、血液(出血性貧血・DIC)2例の16症例の経験は可能と思われます。

しかしながら病態機能内科学(旧第二内科)の診療グループで経験することが少ない内科領域もあります:消化器(肝・胆・膵)、循環器(心筋・心膜・先天性など)、内分泌、呼吸器(免疫関連肺疾患、間質性肺疾患・呼吸器悪性疾患など)、血液(白血球系)、神経(筋・変性・脱髄)、アレルギー、膠原病、感染症(リケッチア・寄生虫など)。これらの症例を初期研修医期間中に経験することが重要になってくると思われます。


内科専攻医の研修はどこでおこなうのか?

病態機能内科学(旧第二内科)に入局し脳循環研究室に属する(脳卒中診療を志す)場合は、基幹病院である九州大学病院・福岡赤十字病院・九州中央病院・国立病院機構九州医療センター・国立病院機構福岡東医療センター・聖マリア病院・白十字病院のいづれかのプログラムに所属します。そして基幹病院で1年以上、またそれぞれのプログラムの連携施設や特別連携施設でも1年以上の研修を行うことになります。それぞれ基幹病院の連携施設は多くありますが、その中から脳循環研究室の関連施設(上述の基幹病院以外に、九州労災病院・製鉄記念八幡病院、永冨脳神経外科病院)で研修を行うことになります。なお、基幹病院は他の基幹病院の連携施設となっていることもありますので、複数の基幹施設で研修を行うこともあります(例:国立病院機構九州医療センターは福岡赤十字病院の連携施設でもあるため、福岡赤十字病院のプログラムに所属して国立病院機構九州医療センターでの研修を積むことも可能です)。各基幹病院の連携施設については 日本内科学会 研修プログラム・研修施設(福岡県) にてご確認ください。


内科専攻医の期間中はどのような専門研修ができるのか?

内科専攻医としての研修と同時に、担当指導医や症例指導医のもとで脳卒中超急性期・急性期また神経救急疾患の的確な診断と病態に応じた治療ができるように、また各種超音波検査などの手技を取得するようにトレーニングを受けます。そして、内科専攻医を終了し内科専門医試験を受けるためには、2編以上の学会発表または論文発表が必要です。関連病院での専攻医研修中に指導医と一緒に学会発表を行い、症例報告(可能であれば英文で)執筆の準備を進めていきます。


内科専攻医研修の終了後はどのようなキャリアプランがあるのか?

内科専攻医研修が終了した後は、急性期基幹病院また地域・慢性期医療機関などの関連病院において急性期・回復期・慢性期の脳卒中医療を実践し、若手医師の指導をしながら更なる知識・技術の研鑽を積んでいきます。そして、最前線で脳卒中救急診療にあたる者、脳血管内カテーテル治療を専門とする者、リハビリテーションを専門とする者、老年病・認知症医療を専門とする者など、それぞれの専門領域ができてくる時期になってきますが、それでも専門領域の医療に特化するのではなく、全身を診ながら、医療レベルの向上や多様化にあわせて行く必要性が有るかと思います。

その後、大学院への進学・脳血管内治療のトレーニング・国立循環器病研究センター病院への国内留学・関連病院での地域医療継続に大きく進路が分かれてきます。また脳卒中専門医の資格取得を目指していきます。脳卒中専門医試験の受験のためには脳卒中学会で1回以上筆頭演者として発表すること、また脳卒中に関する原著論文もしくは症例報告が2編以上(共著でも可)必要となりますので、上級医の指導の下で準備していきます。脳循環代謝研究室では関連病院に入院した急性期脳卒中症例のデータベース(Fukuoka Stroke Registry:FSR)(http://www.fukuoka-stroke.net)を整備していますので(2019年5月末時点で約17,000症例)、関連病院での診療に従事しながらFSRを用いて臨床研究を行い、学会発表や論文発表を行っていくことができます。そしてリハビリテーション専門医を目指すために、リハビリテーション専攻医研修を受ける機会を設けることも可能です。


大学院進学について

専門領域についてより深く学びたい、最先端の基礎研究を行いたい、多施設の臨床データに基づいた臨床研究を深めたい、という方は大学院進学もよいと思います(九大脳循環代謝研究室に入って10年後までに1/3の方が大学院に進学しています)。

九大脳循環代謝研究室では、脳卒中の病態解明そして脳卒中の新規内科治療法の模索・開発のために基礎研究を続けてきています。特に実臨床や臨床研究で生じた疑問や課題を、動物実験や分子細胞生物学的手法による研究を行ってきているのが特徴です。近年は、Neurovascular unitの立場から脳梗塞発症後の組織障害や修復過程を、細胞・分子レベルで細かく見直し再生医療への糸口を模索する研究を展開しています。また心血管病と活性酸素種に関する研究や脳梗塞後の炎症応答に関する研究などでは、研究室メンバーにより世界トップレベルの論文報告を行ってきました。臨床での疑問点を解決するような基礎研究も行い、その成果を臨床に還元して、脳卒中医療に貢献していきたいと考えています。

また急性期脳卒中医療で得られた貴重な臨床情報を前向き多施設共同研究である福岡脳卒中データベース研究(Fukuoka Stroke Registry: FSR)(http://www.fukuoka-stroke.net)として登録し追跡情報と合わせて、脳卒中医療についての臨床研究を行ってきています。本研究は2007年に開始され、2019年5月末までに登録症例数は2019年5月末時点で約17,000症例(追跡率91%)であり、国内外含め精度の高い大規模脳卒中データベースとなってきています。また本研究の特徴は全例で血漿やゲノムを保存していることです。このデータベースを用いてこれまで脳卒中重症度・神経機能増悪や改善・機能転帰に関連する種々の因子や脳卒中に関連するバイオマーカーを同定し、その成果を国際一流誌に数多く報告してきています。現在、九州大学医療経営・管理学講座の鴨打正浩教授(脳循環代謝研究室の第5代研究室主任)のもとで、大学院生としてFSRやナショナルデータベースを用いた臨床研究をおこなっています。

その他に、これまで基礎医学系講座へ出向して基礎研究を行うこともあり、また衛生・公衆衛生学講座(二宮利治教授, 病滝機能内科学腎臓研究室出身;秦淳准教授, 病態機能内科学脳循環代謝研究室出身)で久山町一般住民を対象としたコホート研究(久山町研究)に従事して臨床疫学を学ぶこともできます。

大学院進学のメリットは、4年間を通じて継続して指導を受けながら研究ができること、考える時間が十分あること、研究を通して国内外の多くの人と出会えること、など様々ですが、脳卒中をはじめとする脳血管障害などの専門領域について深く勉強し、一見臨床とは関係がないような基礎医学の知識が病気の捉え方や治療の考え方を深めてくれることも少なくありません。現在の脳卒中医療の問題点を周りの人と協力しながら解決して、最終的に学術論文にまとめていく作業は、臨床医としても大きな成長につながる経験になると思います。


国立循環器病研究センター脳血管内科への国内留学について

国立循環器病研究センター脳血管内科は脳卒中の集約的急性期内科治療を全国に先駆けて実践して、長年にわたり脳卒中内科治療の普及に努めてきている施設です。これまで日本の脳卒中医療レベル向上に多大な貢献をしてきており、現在も国内外の脳卒中医療や臨床研究をリードしています。

さて、九州大学病態機能内科学と国立循環器病研究センターとのつながりは、同センター創立時に病態機能内科学第5代教授の尾前照雄先生が病院長(後に総長、名誉総長)として、また講師の山口武典先生が脳血管内科部長(後に総長、名誉総長)として赴任した時期までさかのぼります。以後、同センターの脳血管内科部長は峰松一夫先生(後に院長、名誉院長)、豊田一則先生(現、副院長)、古賀政利先生(現、部長)と九大病態機能内科学また当グループの出身者に引き継がれてきています。そして脈々とスタッフ医師やレジデント医師として当グループから国内留学希望者を派遣して参りました。これまで当グループから国立循環器病研究センターに出向した医師は、他大学出身の医師とお互いに切磋琢磨して最先端の脳卒中医療の研修を行うとともに、同センターが主幹の多施設共同前向き研究等に参加して、上級医の指導のもとで研究成果を学会や論文として発表してきています。


血管内治療のトレーニングについて

脳卒中の超急性期治療は近年、劇的な変化をとげました。脳梗塞に対して2005年にrt-PA血栓溶解療法が日本でも開始されました。また2010年より血栓回収カテーテル治療が認可され、その後も血管内治療デバイスの発展とともに超急性期機械的血栓除去術に治療成績も向上してきています。現在では超急性期脳梗塞患者に対する治療として考慮すべき治療となってきています。

さて、脳循環代謝研究室ではこれまでに脳神経血管内治療専門医を取得した研究室メンバーが2020年度までに計12名おり、関連病院(国立病院機構九州医療センター、九州労災病院、製鉄記念八幡病院、福岡赤十字病院、聖マリア病院、白十字病院)での脳梗塞超急性期の血管内治療に従事しています。また他の急性期関連病院(国立病院機構福岡東医療センター)においても脳神経外科出身の血管内治療指導医のもとで血管内治療に従事してトレーニングしています。そして血管内治療症例数が豊富な小倉記念病院脳神経外科に国内留学して治療経験を積む機会を設けています。しかしながら依然として脳神経血管内治療専門医はニーズには足りていません。今後も引き続き脳神経血管内治療専門医の育成に励んでいきたいと考えています。


脳神経内科専門医資格の取得について

①脳循環代謝研究室の関連施設は日本神経学会の教育施設・准教育施設・教育関連施設に該当します。
②新専門医制度下の神経内科専門医資格取得にはcommonな神経疾患の症例経験・脳卒中の経験が重視されるようになりました。
③脳循環代謝研究室の関連施設で専門医取得に必要な様々な神経疾患の症例経験ができます。
④関連施設での研修や国内留学での研修を通じて、これからも神経内科専門医の育成にも励んでいきます。

神経内科専門医取得に向けての研修は、内科専門医資格取得とは異なり、カリキュラム制での研修となります。つまり、必要な研修歴と症例経験をつむことができれば受験資格を得ることができます。
さて、脳循環代謝研究室にはこれまで神経内科専門医を取得した研究室メンバーが2020年度までに計19名おり(うち6名が指導医)、また研究室の急性期関連施設は日本神経学会の教育施設・准教育施設・教育関連施設のいづれかに該当します。そのため当研究室の関連施設での勤務・研修を通じて神経内科専門医資格取得に向けての研修歴を積むことができます。
また新専門医制度下では、神経内科専門医資格取得に向けてcommonな神経疾患の症例経験がより強く求められるようになってきています。そのため脳循環代謝研究室の関連病院での勤務・研修を経ることで必要な症例の経験も以前にも増して十分に可能です。
具体的には、9疾患群78疾患(計16の疾患カテゴリー群)に分類されていて、研修修了の認定には9疾患群から各1疾患(計9疾患)以上の症例経験を含めて、計90疾患以上の症例を経験してシステム上で症例を登録することが求められています。さらに、17例の症例要約の提出も必要ですが、この17例には①16疾患カテゴリーから13疾患カテゴリーに属する疾患について各1症例(計13症例)、②神経救急として経験した2症例、③自ら専門外来で初診より担当し鑑別疾患と治療計画を立てて診療した1症例、④他科からコンサルテーションを受けて対応した1症例が必要です。9疾患群の16疾患カテゴリーの内容は神経内科専門に研修カリキュラム(症例要件)でに記載してありますが、免疫性疾患群の「中枢性脱髄疾患」と「免疫性筋疾患」以外の14疾患カテゴリーに属する症例は、脳循環代謝研究室の関連施設での勤務・研修の中で必ず経験します。また神経救急疾患や他科からのコンサルテーションは日常茶飯事に経験しますで、症例要約に必要な症例も通常の診療内で十分に経験することもできます。
その他の具体的な要件などは、日本神経学会のホームページで神経内科専門医カリキュラム制研修の概要神経内科専門カリキュラム制研修の概要神経内科専門に研修カリキュラム(知識・技術技能要件)もご参照ください。
なお、これまで国内の神経内科教育施設(他大学病院・国立病院機構など)への短期間留学も行ってきています。今後も引き続き関連施設や国内留学での研修を通じて神経内科専門医の育成にも励んでいきたいと考えています。


地域医療の継続について

超急性期のrtPA血栓溶解療法や血管内治療で劇的に症状が軽快する方も多くいますが、それでも超急性期治療を受けても30〜40%の脳梗塞患者は3ヶ月後に自力歩行ができていない現状があります。また超急性期脳梗塞の治療の恩恵をうけることができる患者も急性期脳梗塞患者の約1割に留まっています。そして脳出血に対する急性期治療については急性期の積極的な降圧療法の知見が集積されて血圧管理の進歩はありますが、依然として有効な治療法が確立していません。

しかし脳卒中の急性期から回復期だけでなく慢性期においても的確に全身管理を行うことで、その後の機能回復の程度や日常生活動作レベル、また生命予後は大きく変わってきます。高齢の脳梗塞患者が多く、また認知症の合併や後遺症として症候性てんかんを有している方も多いですので、脳卒中だけでなく老年医学・栄養学・神経common disease(認知症・てんかんなど)また介護福祉システムなどにも精通していく必要があります。つまりいかに慢性期の脳梗塞患者をトータルマネージメントしていくかが重要になってきます。

しかしながら現状では地域の医療機関において、脳梗塞慢性期患者のトータルマネージメントを担える人材がまだまだ不足しています。そこで 脳卒中の急性期医療だけではなく慢性期医療にも明るい人材の育成にも取り組んでいきたいと考えています。


リハビリテーション専門医の資格取得について

早期の日常生活動作向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもとに脳卒中発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うこと、また急性期リハビリテーションに引き続きより専門的かつ集中的に行う回復期リハビリテーションを実施することが勧められてきています。そして特に回復期リハビリテーションではリハビリテーション専門医がリハビリスタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚師)や看護師によるチームの統括役として機能して、リハビリ内容などに無理がないかを医学的観点から助言していくことが求められてきています。しかし超高齢社会に向けて回復期リハビリテーションの病床数は増加してきていますが、専門医の不足が続いています。

当グループでもこれまでに急性期脳卒中医療を経験した上で、リハビリテーション専門医の資格を取得したメンバーが5名います。これまでは認定研修施設で3年以上研修して、自らリハビリテーション医療を担当した症例の症例報告や症例リストを必要数提出するなど、いわゆる研修カリキュラムに則ってリハビリテーション専門医の受験資格を得ることができていました。2018年度から開始された新専門医制度のもとでも、リハビリテーション科は基本領域ではありますが、リハビリテーション科領域が定める特定の基本領域(内科はこれに含まれいます)の専門医既取得者は通常の研修プログラム制(専攻医制度)ではなく研修カリキュラム制を選択することができるようです。ただし2019年7月時点で研修カリキュラムの詳細はまだ決まっていません。

しかし当グループでは内科全般をベースに脳卒中臨床に精通したリハビリテーション専門医の育成をも今後も継続していきたいと考えています。そこで内科専門医を取得後に脳卒中の専門研修を行いながら、関連のリハビリテーション研修施設においてリハビリテーション学会の定める新規研修カリキュラムに則って研修をおこなえる機会を設けていきたいと考えています。


出産・育児について

出産前の体調は変わりやすく、また出産後も家庭と仕事のバランスの取り方は多様性がありますので、その期間の働き方には柔軟に対応しています。また出産後も育児を担いながらもキャリアを継続できるように、九州大学病院のきらめきプロジェクト(https://www.kyudai-kirameki.com/p_outline.php)を利用したり、関連の回復期・慢性期病院での時短での勤務など、各人にあった環境作りを提案しています。


専門医や学位(博士号)取得後について

内科専門医や脳卒中専門医の取得、また学位(博士号)の取得の後は、専門領域のエキスパートになったり、後輩医師を指導したり、オリジナリティーのある研究に取り組んだり、海外留学するなど、多彩なキャリアの歩み方があります。


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