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2021年9月1日(水)

安部大介先生(H28)が第334回日本内科学会九州地方会で専攻医賞を受賞しました。

2021年8月28日(土)に開催されました第334回日本内科学会九州地方会において、安部大介先生が九州大学病院の病棟医員であった頃に経験された症例を発表し、専攻医賞を受賞しました。

 

タイトル:肺腺癌に対するアテゾリズマブ療法による免疫関連有害事象への治療中に併発した単純ヘルペス脳炎の1例

抄録:

【症例】73歳、女性【主訴】意識障害、痙攣【現病歴】X-1年12月に前医で右下葉肺腺癌と診断された。免疫チェックポイント阻害薬のアテゾリズマブを含む化学療法が4コース施行され肺腫瘤は縮小したが、X年4月より難治性下痢が出現し免疫関連有害事象による大腸炎と診断された。ステロイドとインフリキシマブ(IFX)が投与され下痢は一時的に軽快したが再増悪したため、X年5月に当科転院となった。転院第3日目にIFXを再度投与したところ、転院4日目より意識障害が出現し、転院6日目に全身性強直間代性痙攣を発症した。頭部MRI拡散強調画像で左側頭葉内側に高信号域を、髄液で単核球(238 /μL)・蛋白(650 mg/dL)の増多と単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)DNA(PCR法)を認め、単純ヘルペス脳炎と診断した。抗痙攣薬とアシクロビルの投与にて次第に痙攣発作は消失し、HSV-2DNA陰性化を認めたが、重篤な後遺症が残存した。【考察】免疫チェックポイント阻害薬は、免疫再構築により様々な免疫関連有害事象を誘発しうる。抗TNFα抗体は免疫関連有害事象の治療に用いられるが、結核やHSVなど潜伏感染病原体の再活性化リスクを高める。本症例におけるHSV-2脳炎発症には、免疫チェックポイント阻害薬および抗TNFα抗体の関与が示唆され、両者併用には注意を要すると考えられた。