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2023年1月24日(火)

脇坂祐毅先生(H30)が第340回日本内科学会九州地方会で専攻医賞を受賞しました!

脇坂祐毅先生(H30)が第340回日本内科学会九州地方会で専攻医賞を受賞しました。

 

タイトル:脳アミロイドアンギオパチーに関連した一過性局所神経徴候と考えられた頻回な一過性右上肢脱力の症例

<抄録>【症例】75歳,女性【主訴】右上肢の一過性の脱力【現病歴】左小脳半球血管芽腫に対する手術歴がある.X年4月に1時間程度持続する右上肢の脱力が出現し近医で抗てんかん薬が開始された.以後も右上肢の脱力を繰り返し同年5月に当科を受診した.来院時には認知機能を含め明らかな神経学的異常所見を認めなかった.頭部MRIでは拡散強調画像(DWI)で両側前頭頭頂葉皮質下白質に点状の高信号域が散在し,FLAIR画像では左中心溝に沿ったくも膜下出血を認めた.脳動脈瘤・血管奇形・主幹動脈病変・塞栓源を認めず,脳波でてんかん波も明らかでなかった.T2*強調画像で著明な脳表ヘモジデリン沈着を認め脳アミロイドアンギオパチーに関連した一過性局所神経症候(TFNE:Transient Focal Neurological Episodes)と診断し,抗血栓療法は行わず血圧を厳格に管理する方針とした.【考察】TFNEは脳表ヘモジデリン沈着に関連した部分てんかんや血管攣縮に伴う虚血などが原因と考えられており,脳皮質下出血のリスクが高い.高齢者に一過性神経症状を生じT2*強調画像等で脳表ヘモジデリン沈着や微小出血を認めた場合には,TFNEの可能性を考慮し抗血栓療法の導入を慎重に検討すべきである

 

脳アミロイドアンギオパチーに関連した一過性局所神経徴候 (transient focal neurological episodes: TFNE) の概念は少しずつ広まってきています。また脳アミロイドアンギオパチーによる脳微小出血巣辺縁にMRI-DWIで高信号を示すことがありますが、これは出血後急性期のオキシヘモグロビンの粘稠度による拡散制限を示しているとされています。しかしMRI-DWI高信号を脳梗塞と判断したりTFNEをTIAと判断して抗血栓療法を開始すると脳出血を生じさせてしまう危険性があります。そのためTFNEについて脳卒中専門医は熟知しておいたほうが良いかと思われます。

<参考文献>

1) 村上綾ら. 拡散強調画像上の皮質下白質高信号と皮質脳表ヘモジデリン沈着性を伴う一過性局所神経徴候を繰り返した脳アミロイドアンギオパチーの1例. 臨床神経 2021;61:874-877

2) Smith EE, et al. Cerebral amyloid angiopathy-related transient focal neurologic episodes. Neurology 2021;97:231-238