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2023年6月1日(木)

脇坂佳世先生(H22)の大学院での研究成果がScientific Reports誌に掲載されました!

脇坂佳世先生(H22)が大学院で行った研究成果がSci Rep誌に掲載されました!

Non-linear association between body weight and functional outcome after acute ischemic stroke

Sci Rep 2023;13:8697

 

生活習慣の欧米化によって日本人の肥満有病率は以前に比して増加してきており、特に脳卒中を発症しやすい高齢者での肥満有病率が高いとされています。肥満は脳卒中や心血管病の確立した発症リスクでありますが、心筋梗塞・慢性腎臓病・癌・肺気腫などの慢性疾患を有する患者では、肥満者は非肥満者よりも生命予後を良いことが示唆されており、いわゆるobesity paradoxとして認知されています。しかしながらbody mass index (BMI)で評価した肥満度と脳卒中後の転帰の関連について複数の報告がこれまでなされていますが、未だ一定の見解には至っていません。。

そこで脇坂佳世先生はFukuoka Stroke Registryに登録された急性期脳梗塞患者で発症前のADLが自立していた11749例を対象に、入院時BMIと脳梗塞発症3ヶ月後の機能転帰不良(modified Rankin Scale:3-6)との関連を検討しました。なおBMIWPRO基準に則り4群に分類しています:低体重(BMI<18.5)、正常体重(BMI:18.5-22.9)、過体重(BMI:23.0-24.9)、肥満(BMI≥25.0)

その結果、

1)脳梗塞発症3ヶ月後の機能転帰不良となる調整後オッズ比(95%信頼区間)は、正 常体重群をreferenceとすると、低体重群:1.52 (1.24-1.85)、過体重群:0.83 (0.71-0.96)、肥満群:0.97 (0.81-1.15)であり、転帰不良となるリスクは低体重群で有意に高くなる一方で、過体重群では有意に低くなり、肥満群では変わらないこと

2)BMIを連続的に変化させたときの調整後オッズ比(95%信頼区間)を求めたスプラインモデルや、機械学習によるSHAP値(アウトカムに寄与する度合いを数値化したもので数値が高いほど関連が強い)においても同様の結果であること

を見出しています。

今回の結果からは、BMIは脳梗塞発症後の短期機能転帰との間に非線形性の関連が示され、正常体重と比較すると、機能転帰不良となるリスクは低体重で増加し、過体重で減少はするものの、肥満では関連を認めませんでした。観察研究ですのでBMIと脳梗塞後機能転帰との関連のメカニズムは解明できませんが、脂肪組織が分泌するレプチンなどが脳虚血損傷の軽減や回復を促進させる役割を担っている可能性があることが報告されていますので、このことが両者の関連の背景にあるのかもしれません。