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2023年7月3日(月)

中村晋之先生(H15)の研究成果がPLoS One誌に掲載されました!

中村晋之先生(H15)の研究成果がPLoS One誌に掲載されました!

Association between decreases in serum uric acid levels and unfavorable outcomes after ischemic stroke: A multicenter hospital-based observational study

PLoS One 2023;18:e0287721

 

高尿酸血症は炎症を惹起して動脈硬化性の脳・心血管病の発症リスクを高めることが知られていますが、一方で尿酸は抗酸化作用により中枢神経において神経保護的に作用することも知られています。特にrtPA血栓溶解療法や機械的血栓除去術を模した虚血再開通モデルにおいて血流が再開した際に活性酸素種が産生されて神経細胞死を誘発することが実験的に示されていますので、高尿酸血症は急性期脳梗塞において神経保護的に作用する可能性も考えられます。しかしながら尿酸値と脳梗塞後の臨床転帰との関連は未だ一定の見解には至っていません。その理由の一つとしてこれまでのほとんどの研究において脳梗塞急性期の尿酸値の変化に着目していないことが挙げられます。

そこで中村先生はFukuoka Stroke Registryに登録された急性期脳梗塞患者で発症前のADLが自立していて、かつ入院中に尿酸値を2回以上測定していた4621例を対象に、入院後の血清尿酸値の変化(入院時尿酸値–入院中の尿酸最低値)と3ヶ月後の運動機能転帰不良(mRS 3-6)との関連を検討しました。なお血清尿酸値の変化によって患者を4群(G1群:変化なし or 増加、G4群:最も低下)に分けて検討しています。

その結果、

1)入院時に比較して男女ともに1-3日後、4-6日後、7-10日後の血清尿酸値は有意に低値であること

2)G3群(男性 9.22-19.79%の低下、女性 11.12-23.53%の低下)とG4群(男性 >19.79%の低下、女性 >23.53%の低下)ではG1群(男性 0%、女性 0%)と比較して、有意に3ヶ月後の運動機能転帰が不良となるリスクが高くなること、また尿酸値低下率が高いほど有意に運動機能転帰不良となるリスクが高いこと

3)G4群はG1群と比較して入院中に神経症状が改善する可能性が有意に低く、またG3群とG4群はG1群と比較して入院中に神経症状が有意に増悪するリスクが高いこと、一方で入院中の尿酸値低下は3ヶ月後までの全脳卒中再発と全死亡とは関連しなかったこと

3)年齢、性、脳梗塞臨床病型、神経学的重症度、CKDの有無、入院時の血清尿酸値にかかわらずに上記2)の関連を認めた(それぞれ因子と血清尿酸値は脳梗塞後の運動機能転帰不良に対して交互作用を有さない)こと

を見出しています。

今回の結果からは、尿酸は脳梗塞急性期において神経保護的作用を有することが示唆されました。