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2024年2月19日(月)

脇坂佳世先生(H22)の大学院での研究成果第2弾がPLoS One誌に掲載されました!

脇坂佳世先生(H22)が大学院の頃から引き続き検討してきていました研究成果がPLoS One誌に掲載されました!

Association between abdominal adiposity and clinical outcomes in patients with acute ischemic stroke

 

脇坂佳世先生は以前に「BMIは脳梗塞発症後の短期機能転帰との間に非線形性の関連があり、正常体重(BMI:18.5-22.9)と比較すると、機能転帰不良となるリスクは低体重(BMI<15.5)で増加し、過体重(BMI:23.0-24.9)で減少はするものの、肥満(BMI≥25.0)では関連を認めない」ことを報告しています(Sci Rep 2023;13:8697)。

BMIは肥満の指標として使われることが多いのですが、BMIは体重を指標としているため、脂肪量だけでなく筋肉量をも反映します。筋肉量は脳卒中後の独立した機能予後良好因子であることが知られていますので、脂肪量と筋肉量は脳卒中後の機能回復に対して異なる作用を示す可能性があります。そのためBMIが脳卒中後の機能転帰の予測するのには最適ではないことも考えられます。

そこで脇坂佳世先生は肥満の指標として腹囲着目して、Fukuoka Stroke Registry に登録された発症7日以内の急性期脳梗塞患者で発症前のADLが自立していた11989例を対象に、入院時の腹囲と3ヶ月後の機能転帰不良(modified Rankin Scale 2-6)また全死亡との関連を検討しました。

なお腹囲はQ1〜Q4の4分位に分類しています:Q1(女性 ≤74.3cmm、男性 ≤78.9cm)、Q2(女性 74.5-81.8cm、男性 79.0-84.9cm)、Q3(女性 82.0-88.8cm、男性 85.0-90.8cm)、Q4(女性 ≥89.0cm、男性 ≥91.0cm)。

入院時のBMIを含めた虚血性脳卒中機能予後不良因子と報告されている諸因子を考慮して検討した結果、

  • 機能転帰不良となるリスクはQ1群と比較してQ2群とQ3群で有意に低下したが、Q4群では有意差を認めず(p=0.05と傾向は認めています)、腹囲と機能転帰不良の間に非線形性の関連(L字型)を認めました。
  • さらに腹囲と機能転帰不良の関連にインスリンが関与していないかを検討するために、インスリン治療を受けていなかった虚血性脳卒中患者に限定して検討すると、空腹時血中インスリン量、インスリン分泌能、インスリン抵抗性をも加味して検討しても同様の結果でした。
  • 上記の腹囲と機能転帰不良の関連は、とくに非糖尿病の患者群で強く認めました。
  • 一方で腹囲と3ヶ月後までの全死亡の間に有意な関連を認めませんでした。

今回の結果から、腹囲は脳梗塞後の短期機能転帰との間にBMIとは独立して関連することが示されました。観察研究ですので脂肪量を反映する腹囲がどのようにして虚血性脳卒中の機能予後に影響を及ぼすのか、そのメカニズムは解明できていません。今後のさらなるエビデンスや基礎研究の結果の集積が待たれます。