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2024年2月19日(月)

賣豆紀智美先生(H21)の研究成果がPLoS One誌に掲載されました!

賣豆紀智美先生(H21)が臨床(主に救命救急センター)に従事しながら行なっていました研究成果がPLoS One誌に掲載されました!

Body temperature in the acute phase and clinical outcomes after ischemic stroke

 

急性期脳梗塞患者は脳梗塞サイズが大きく重症であるほど体温が上昇することを実臨床で経験することが多いかと思います。これまでにも体温の上昇は脳梗塞患者の機能転帰不良と関連することを示唆する報告がありますが、一方でrtPA血栓溶解療法や機械的血栓除去術を施行した脳梗塞患者では体温の上昇が機能転帰良好と関連するとの報告もあり、一定の見解には至っていません。また脳梗塞急性期には肺炎や尿路感染症などの併発した感染症が発熱の原因となることもあり、体温の上昇と脳梗塞後の機能転帰の関連は不明確でした。

そこで賣豆紀智美先生は、Fukuoka Stroke Registry に登録された発症24時間以内の急性期脳梗塞患者で発症前のADLが自立しており、発症時に感染症に罹患していなかった7177例を対象に、腋窩で計測した体温を入院後7日間連続して計測し、その平均体温と入院中の神経症状軽減、神経症状増悪、3ヶ月後の機能転帰不良(modified Rankin Scale 3-6)、全死亡との関連を検討しました。

なお平均体温はQ1〜Q5の5分位に分類しています:Q1(35.1-36.5℃)、Q2(36.5-36.7℃)、Q3(36.7-36.8℃)、Q4(36.8-37.1℃)、Q5(37.1-39.1℃)。

その結果、脳梗塞発症後の感染症併発やCRP値を考慮しても

  • 平均体温が高くなればなるほど、入院中に神経症状が改善する可能性が低くなり、また退院までに神経症状が増悪する可能性が高くなること
  • 平均体温が高くなればなるほど脳梗塞発症3ヶ月後の機能転帰が不良となること
  • 平均体温は入院中死亡や脳梗塞発症3ヶ月後までの全死亡とは関連しないこと
  • 特に発症3日以内の早期の時期に37℃よりも高い体温を示した患者は37℃以下の患者と比較して3ヶ月後の機能転帰が有意に不良であること
  • 発症7日間で37℃よりも高い体温を示した期間が長くなればなるほど3ヶ月後の機能転帰が不良となること

を見出しました。

また脳梗塞急性期に感染症を併発した患者を除外しても、また37.5℃以上の患者を除外しても同様の結果を認めています。

今回の結果から、脳梗塞急性期の体温上昇は脳梗塞後の転帰不良と関連することが示されました。これまで脳梗塞動物モデルでは低体温が脳梗塞後の機能改善をもたらすことが示されてきていますが、ヒトにおいて脳梗塞後の体温低下療法が脳梗塞後の機能転帰を改善させる確固としたエビデンスはありません。今後のさらなるエビデンスの集積が待たれます。