医学生・研修医の方へFOR STUDENT & RESIDENT

先輩からのメッセージ

03.血管内治療

北村 泰佑

Taisuke Kitamura

広島大学 H24卒

総合力を培いながら、より専門性を高める

入局を決めたきっかけ

 学生時代は、離島・へき地医療や家庭医療など患者さんと近い距離でゆっくりと向き合っていける医療に興味がありましたが、初期研修の中でスピード感を求められる救急医療に携わる先輩方の姿に憧れを抱くようになりました。様々な救急疾患の中でも、脳卒中は超高齢社会を迎える中で極めて需要の高い疾患であること、そして当研究室の先輩方が素晴らしい指導力と人間力を兼ね備え、疾患の背景にある生活習慣病や合併症、ひいては患者さん自身を全人的に診るgeneralistとしての姿勢を伝統としている点が自分の理想とする医師像と重なり入局を決めました。専門領域を選択するにあたり、治療的な手技が少ないことが少し懸念されましたが、後述するようにカテーテルを用いた脳血管内治療のエビデンス確率に期待が寄せられていた時期であり、内科医にも脳血管内治療専門医の垣根が低くなってきていたことも入局の後押しとなりました。

やりがいを感じた瞬間

 意思疎通も歩行もできない重症脳梗塞患者さんが独歩で退院し、社会生活へと復帰されたときには最も大きな喜びを感じます。
 脳梗塞に関しては長年アルテプラーゼ血栓溶解療法を上回る治療法が現れず、その適応範囲も治療効果も限定的であったため、急性期医療の現場では無力感に苛まれることも多々ありました。この苦境を打開すべく期待が寄せられていたのが血管内治療であり、その有効性が示されたのが私の入局した翌年のことです。治療奏功例における劇的な症状改善は数ある内科疾患の中でも特筆すべきではないかと感じます。幸いにも修練の環境を提供して頂き、現在は脳神経血管内治療専門医を取得し日々研鑽を積んでいます。とくに脳梗塞に対するカテーテル治療においては自身の1時間足らずの手技が目の前の患者さんの人生を左右し得るという点で重圧を感じますが、少しでも多くの患者さんにこの治療の恩恵を受けて頂きたいと思いますし、専門医としてその診療の一翼を担えていることにはやりがいを感じます。
 脳血管障害の診療は急性期治療のみでは完結せず、回復期リハビリテーションや予防医学、病態解明や神経再生技術の基盤となる研究など幅広い分野に支えられています。当研究室には各分野に秀でた先生方が多数在籍しており、各々が専門性を発揮し、切磋琢磨しながら厚みのある診療を提供できていると感じています。

今後の目標

 まずは脳血管内治療のスキルを磨くことです。同専門医数は年々増加していますが、地域格差は依然として大きく、福岡県内主要都市においても治療を提供できない地域病院が幾つも存在します。脳血管内治療に携わる上で脳神経外科の先生方との協力体制は必須ですが、早く内科医として達し得る一人前のレベルになれるよう修練し、身に着けた手技、知識を地域医療に還元することが求められていると感じています。