医学生・研修医の方へFOR STUDENT & RESIDENT

先輩からのメッセージ

06.子育てと両立

佐藤 倫子

Noriko Sato

九州大学 H24卒

様々な働き方の選択肢があり、
仕事と家庭の両立ができる研究室です

入局を決めたきっかけ

 5年生の病院実習で九州大学第2内科を回った際に、当研究室の吾郷哲朗先生(現2内科准教授)の脳卒中の講義を聴き脳卒中診療に興味を持ちました。その講義の中で吾郷先生は脂肪組織由来幹細胞を用いた神経再生療法についても触れられ、私の祖父が脳梗塞で麻痺が残りその後肺炎で亡くなってしまったのもあり、神経を再生して後遺症を軽減するなんてそんなすごいことができるんだと感動したのを覚えています。
 大学卒業後、当研究室の関連病院である九州中央病院で初期臨床研修を行う中で、救急車搬入台数が多い病院で脳卒中はもちろん意識障害やてんかんなどの救急患者さんも多く搬入されるのですが、コンサルトに気軽に応じ迅速に対応される当研究室の先生方はとてもかっこよく印象的でした。研修では脳卒中をはじめ、てんかん、神経疾患の患者さんの診療に参加させていただき、検査データだけではなく問診を重視し、患者さんの生活環境・社会的な背景まで考慮して診療にあたる先生方の姿に感銘を受けました。特に脳卒中はときに重い障害が生じてしまう、患者さんのQOLに直結する疾患です。昨日まで動いていた手足が動かなくなってしまった、言葉が思うように出ない、など想像するだけでも本当に大変な状況に患者さんは突然置かれてしまいます。そんなつらい状況だからこそ細やかな配慮で患者さんに寄り添い、真摯に患者さんと接する先生方をみて、私もこんな医師になりたいと感じました。また脳卒中の患者さんは基礎疾患・合併症を有している方も多く、脳卒中だけではなく幅広い内科知識が必要です。幅広い知識を習得し単一の疾患だけではなく患者さん全体を診ることができる、患者さんの生活に寄り添える医師になることを目標に、入局を決意しました。

やりがいを感じた瞬間

 脳卒中は患者さんのQOLに直結する疾患であり急性期診療では慎重な管理を要し、日々変化する病態をきちんと把握してこの患者さんにとっての最善の治療は何か、日々考えながら診療を行っています。病状が落ち着いて自宅退院もしくは転院となった際に、ご本人やご家族から感謝のお言葉を頂いたときや退院後にお手紙を頂いたときは、診療のやりがいを感じるとともに、私も頑張ろう!と患者さんから背中を押していただいた気持ちになります。
 また私は2017年に大学院に進学し、当研究室の7つの関連病院に入院した脳卒中患者さんを対象とした急性期脳卒中コホートである、福岡脳卒中データベースFukuoka Stroke Registry(FSR)に携わり研究を行いました。個々の症例に対する診療はもちろん大事ですが、大学院では多くの症例のデータを使用した疫学的な手法で、臨床の疑問にアプローチしていく過程を学ぶことができました。大学院4年目に第1子を妊娠しコロナ禍ということもあって自宅でデータ解析をすることが多くなり論文を完成させることができるのか不安もありましたが、指導教官の先生方のご指導のおかげで無事に論文が受理され、出産後に学位も取得することができました。論文が受理されるまでに少し時間がかかりましたが、受理されたときは自分の研究成果が今後の脳卒中診療に少しでも貢献できるのかなと、研究面でのやりがいを感じました。

今後の目標

 2021年4月からは子供がまだ小さいことをご配慮いただき、九州中央病院で臨床検査科医員として勤務しています。一旦脳卒中診療とは距離を置く形となっていますが、検査科の医師としての業務を行いながら、大学院で身に着けたデータ管理スキルを活かして同院の脳神経内科の神経疾患症例のデータベースを作成、また時間が合えば回診に参加したりして、臨床に触れる機会を作っています。今後の目標としては、大学院でクリニカルクエスチョンを疫学的に解決していく面白さを学んだため、育児と併行して研究を続けていけたらなと考えています。
 当研究室は、急性期病院だけではなく回復期病院にも医師を派遣しており、いろんなフェーズで患者さんに寄り添うことのできる研究室です。また、特に女性医師の方は出産・育児などで働き方を変えなくてはいけない場面が出てくるかと思いますが、当研究室には急性期病院での勤務だけではなく、回復期病院での勤務、外来業務を行いながら大学院で研究など、様々な選択肢があり柔軟な対応が可能です。私自身、今後自分がどのような形で診療に携わっていくのかまだわかりませんが、その時々で自分の置かれている状況下で何事にも真摯に向き合えば、その経験が臨床や研究で活き、ひいては患者さんのためにつながると考え、日々業務を行っています。
 様々な環境で活躍されている先輩の女性医師が当研究室にはたくさんいらっしゃいます。話を聞いてみたいだけでも結構です、気軽に研究室にご連絡ください。