九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)消化器研究室

当科における臨床研究および治療 CLINICAL CASE STUDY

炎症性腸疾患の治療法および予後に関する調査研究

臨床研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学大学院病態機能内科学では、現在炎症性腸疾患ならびにその鑑別を有する患者さんを対象として、炎症性腸疾患の治療法および予後に関する「臨床研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2023年3月31日までです。

研究の目的や意義について

大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患といい、潰瘍性大腸炎とクローン病が挙げられます。
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。 クローン病は主として若年者にみられ、口腔にはじまり肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍(粘膜が欠損すること)が起こりえますが、小腸の末端部が好発部位で、非連続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)が特徴です。それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じる病気です。 両疾患ともに、いまだ原因は不明であり、確立された治療法はありません。はっきりと証明されたものはありませんが、食物や腸内細菌に対する異常な免疫反応が原因ではないかとも言われています。
内科的治療として、抗炎症薬であるサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)およびメサラジン(ペンタサ、アサコール)や、副腎皮質ステロイド(プレドニンなど)、アザチオプリン(イムラン)などの免疫を押さえる薬などがあります。また、薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。最近では、抗TNFα抗体などの生物学的製剤があり、高い有効性を示していますが長期使用により効果が減弱していくことも知られており今後の課題です。また近年、新しい生物学的製剤も登場しています。クローン病では、栄養療法も重要な治療です。また、内科的治療で症状を改善することが困難な場合は手術を含めた外科的治療を必要とする場合があります。
潰瘍性大腸炎、クローン病それぞれについて日本でも診療ガイドラインが作成されています。しかし、治療法は様々であり、病状に応じて選択し、治療を行っています。それぞれの治療法の単独または組み合わせで治療を行ったときの効果の比較や安全性、長期経過についてのはっきりした報告はありません。また、潰瘍性大腸炎、クローン病ともに長期経過中に悪性腫瘍が合併することが問題となっており、適切な検査方法、期間を探っていく必要があります。
本研究では炎症性腸疾患患者の登録システムを作成することにより、各種治療法の有効性と安全性、長期経過、悪性腫瘍発生を含む合併症のリスクを解析し、その後、追跡することで検証を行うことが可能になると考えています。

研究の対象者について

九州大学消化管内科及び共同研究施設で潰瘍性大腸炎またはクローン病と診断された患者さん、または鑑別困難例、ならびに炎症性腸疾患と鑑別を有する腸管ベーチェット、単純性潰瘍を含む患者さんのうち、本観察研究の主旨に同意の得られた者とします。15歳未満の被験者については親権者、16歳以上20歳未満の被験者については親権者または代理人の同意が得られた者とします。
<除外基準>
患者の同意が得られない症例。
<中止基準とその手順>
登録時に同意取得が得られるも、後日申し出により登録中止を希望された場合は登録中止とします。なお、登録中止とした場合には、以後の追跡調査も行いません。
目標症例数:後方視的研究 全体 潰瘍性大腸炎 600例、クローン病 450例
                  (当院 潰瘍性大腸炎 400例、クローン病 300例)
                  (他施設 潰瘍性大腸炎 200例、 クローン病150例)
                   (1973年1月1日~承認日まで)
         前方視的研究 全体 潰瘍性大腸炎 400例、クローン病 300例
                  (当院 潰瘍性大腸炎 250例、クローン病 200例)
                  (他施設 潰瘍性大腸炎150例、クローン病 100例)
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

本研究では1973年からこれまでに九州大学病態機能内科学教室及びその関連施設で収集した症例についてのデータベース(後ろ向き研究用データベース)を作成するとともに、今後、炎症性腸疾患の治療を開始する患者さんで本研究への参加に同意をいただいた方を対象として、新規に症例を登録しデータベース(前向き研究用データベース)を構築します。同意をいただいた患者さんの特徴(年齢、性別、病名など)および臨床情報(既往歴、家族歴、入院歴など)、検査所見(血液検査、消化管検査など)に関するデータを収集してデータベース化し、各種治療法の有効性、安全性、長期経過、合併症のリスクを解析していきます。生物学的製剤を投与されている方については同意が得られた方に対して、その効果減弱の原因を評価することを目的として血中濃度、薬剤の効果を減弱させる原因と考えられる薬物抗体を測定するため通常の血液検査時に追加して試料(約10ml)を採取させていただきます。

対象数は承認日前および承認日以降の症例を併せて潰瘍性大腸炎1000例、クローン病750例です。研究期間は本研究の承認日から2023年3月31日までです。
この研究が適切に実施され、患者さんの人権が守られ、検査や診断の結果が正確に報告されているかを確認するために、他の医療機関の医療関係者やデータ管理者などが、あなたのカルテや検査記録を直接拝見して監査等を行うことがあります。

[取得する情報]
①患者基本情報
登録番号、施設名、施設内ID、年齢、性別、身長、体重、紹介元施設、紹介先施設、最終の情報確認日
②診断情報
発症日、発症年齢、初診日、診断日、診断名 、罹患部位、腸管合併症の有無・詳細、腸管外合併症の有無・詳細、生活歴、家族歴
③臨床情報
臨床症状の有無詳細、検体検査所見、消化管内視鏡検査所見、放射線、生理画像検査所見、病理組織所見
④治療情報
治療法、IBDに伴う手術歴、IBDに伴う入院歴、悪性腫瘍合併の有無、内視鏡的治療の有無、生物学的製剤血中濃度(生物学的製剤投与例のみ)、生物学的製剤血中抗体(生物学的製剤投与例のみ)

生物学的製剤血中濃度、血中抗薬物抗体に関しては当施設での測定ができませんので、株式会社ケー・エー・シーまたは滋賀医科大学へ血液検体を郵送にて送付し、測定を行う予定です。
他機関への試料の送付を希望されない場合は、送付を停止いたしますので、ご連絡ください。
共同研究機関の研究対象者の情報についても、収集し、データベースへの登録行う予定です。

個人情報の取り扱いについて

研究対象者の血液、測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院病態機能内科学消化器研究室のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院病態機能内科学・教授・北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
研究対象者の血液を専門機関へ郵送する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。

試料や情報の保管等について

〔試料について〕
この研究において得られた研究対象者の血液は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院病態機能内科学において同分野教授・北園孝成の責任の下、5年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院病態機能内科学において同分野教授・北園孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の試料や情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

研究に関する情報や個人情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究機関

研究実施場所 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
九州大学病院消化管内科
研究責任者 九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成
研究分担者 九州大学病院国際医療部・准教授・森山智彦

九州大学病院消化管外科(1)・助教・永井俊太郎

九州大学病院消化管内科・助教・鳥巣剛弘

九州大学病院消化管内科・助教・梅野淳嗣

九州大学病院消化管内科・臨床助教・平野敦士

九州大学病院消化管内科・臨床助教・冬野雄太

九州大学病院消化管内科・医員・岡本康治

九州大学病院光学医療診療部・医員・藤岡審

九州大学病院光学医療診療部・医員・河野真一

九州大学大学院医学系学府病態機能内科学・大学院生・井原勇太郎
共同研究施設 滋賀医科大学 消化器内科 教授 安藤朗

国家公務員共済組合連合会 千早病院 内科医長 河内修司

高邦会 福岡山王病院 消化器内科部長・国際医療福祉大学教授 小林広幸

日本赤十字社 福岡赤十字病院 消化器科部長 平川克哉

地域医療機能推進機構 福岡ゆたか中央病院 内科部長 田畑寿彦

日本赤十字社 松山赤十字病院 胃腸センター部長 蔵原晃一

掖済会門司病院 医師 石川伸久

日本赤十字社 嘉麻赤十字病院 内科部長・消化器科部長 金本孝樹

国立病院機構 小倉医療センター 医長・消化器内科チーフ 山縣元

地域医療機能推進機構 九州病院 消化管内科 医師 池上幸治

医療法人社団 製鉄記念八幡病院 消化器内科部長 中村滋郎

社会医療法人財団白十字会 白十字病院 消化器内科副部長 井浦登志実

公立学校共済組合 九州中央病院 消化器科部長 檜沢一興

下関市立市民病院 消化器内科医長 具嶋正樹

遠賀中間医師会おんが病院 院長 矢田親一朗

浜の町病院 消化器内科部長・福岡大学病院臨床教授 瀬尾充

日本赤十字社 綜合病院山口赤十字病院 副院長 末兼浩史

医療社団法人江頭会 さくら病院 医師 天野角哉

社会医療法人社団至誠会 木村病院 医師 久保倉尚哉
業務委託先 企業名等:株式会社ケー・エー・シー

所在地:埼玉県戸田市川岸2-2-50

(レミケード濃度測定、血中抗薬物抗体のみ委託)

連絡先

この研究への登録を希望されない患者様は下記にご連絡下さい。

〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1-1 九州大学病院 病態機能内科(第二内科)
電話:092-642-5261(消化器研究室) FAX:092-642-5273
メール:yihara@intmed2.med.kyushu-u.ac.jp
担当:九州大学大学院病態機能内科学大学院生 井原勇太郎

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