九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)消化器研究室

当科における臨床研究および治療 CLINICAL CASE STUDY

クローン病における抗TNFαモノクローナル抗体製剤治療効果関連遺伝子の解析

ヒトゲノム・遺伝子解析研究について

九州大学病院では、病気に関係する遺伝子や薬の効き目に関係する遺伝子を見つけ出したり、遺伝子技術を取り入れた病気の診断のための技術開発を行ったりしています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」といいます。その一つとして、九州大学病院消化管内科では、現在クローン病の患者さんを対象として、抗TNFαモノクローナル抗体製剤治療効果に関する「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、平成35年11月6日までです。

研究の目的や意義について

クローン病に対し、抗TNFαモノクローナル抗体製剤であるインフリキシマブ(レミケードⓇ)やアダリムマブ(ヒュミラⓇ)による治療が行われるようになり、多くの患者さんにおいて高い症状改善効果が期待できるようになりました。しかし一方で、抗TNFαモノクローナル抗体製剤を使用しても効果の乏しい患者さんや、最初は効果があっても徐々に効果が薄れてくる患者さんがおられます。抗TNFαモノクローナル抗体製剤治療の有効性の違いを引き起こす遺伝子の配列の違いが見つかれば、将来、この病気のさらなる治療法、治療薬の開発に役立つと考えています。
私共はこの研究によって、診断技術を向上させ、抗TNFαモノクローナル抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ)の有効性の違いの原因となる遺伝子を探し出すなどの努力を続けていきます。

研究の対象者について

この研究では、九州大学病院消化管内科にクローン病で通院・入院されている患者さんの中で、新規に抗TNFαモノクローナル抗体製剤を導入される方約40名、また既に抗TNFαモノクローナル抗体製剤を投与されている方約60名を新規対象とさせていただく予定です。また、これまで九州大学病院消化管内科において行われた下記の研究に参加された1340名のうち、二次利用に同意いただいた方も対象といたします。

① 許可番号:516-00
  課題名:クローン病に関するゲノム疫学的研究
  許可期間:平成24年11月12日~平成29年11月11日
  本研究に使用する試料・情報の取得期間:許可日~平成34年6月20日

② 許可番号:214-01
  課題名:潰瘍性大腸炎に関するゲノムに関する疫学的研究
  許可期間:平成19年5月25日~平成22年12月18日
  本研究に使用する試料・情報の取得期間:許可日~平成34年6月20日

研究の方法について

この研究への参加に同意いただきますと、新規に投与させていただく方においては、インフリキシマブ導入の場合は毎回の投与時に、アダリムマブ導入の場合は0週、2週、4週の投与直前およびその後2ヶ月毎の投与時に、通常診療での採血に追加して、研究用の血液を20ml余分に採血させていただきます。治療効果がない、あるいは減弱したと判定した場合には、その時点でも同様に採血させていただきます。
また既に投与中の方は、同意をいただいた際に、同様に通常診療での採血に追加して、研究用の血液を20ml余分に採血させていただきます。
提供していただいた血液からDNAという物質を取り出し、遺伝子多型(一般的に認められる遺伝子配列のバリエーション)や遺伝子が受ける修飾(エピゲノム)について、共同研究機関である理化学研究所および日本大学において解析し、クローン病における抗TNFαモノクローナル抗体製剤の治療効果に関連があるかもしれない遺伝子を探し出します。また関連性のある遺伝子に由来する蛋白の血中濃度などを測定することで機能を調べます。治療効果の評価について、血中のインフリキシマブ・アダリムマブ濃度や、それらに対する抗体の出現の確認も併せて行います。
他機関への試料・情報の送付を希望されない場合は、送付を停止いたしますので、ご連絡ください。
先行研究の参加者からは既に採取されているDNAを使用させていただきます。

〔使用する臨床情報〕
a) 年齢(生年月日) b) 性別 c) 診断時年齢 d) 抗TNFαモノクローナル抗体導入までの罹病期間 e) 罹患範囲(小腸型/小腸大腸型/大腸型) f) 腸管合併症の有無(狭窄、瘻孔、膿瘍など) g) 腸管外合併症の有無(結節性紅斑、関節炎、虹彩炎、肛門部病変など) h) 家系内発生の有無 i) 手術歴の有無、人工肛門造設状態の有無、抗TNFαモノクローナル抗体の術後予防投与の場合はその記載 j) 抗TNFαモノクローナル抗体製剤投与中断歴の有無 k) 抗TNFαモノクローナル抗体製剤投与期間 l) 投与時反応の有無(即時型投与時反応、遅発型投与時反応など) m) 採血時のCDAI、血清CRP値 n) 一次無効、二次無効出現の有無 o) 併用薬(ステロイド剤、免疫調節剤など)

研究に関する情報や個人情報の開示について

本研究において取得した遺伝情報は、あなたの健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性が十分ではないにもかかわらず、開示に応じるとあなたやあなたの血縁者に精神的負担を与えたり、誤解を招く恐れがありますので、遺伝情報の開示には応じられません。

研究機関

研究実施場所
(分野名等)
九州大学大学院 病態機能内科学分野
理化学研究所生命医科学研究センター
日本大学医学部
研究責任者 九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成
研究分担者 九州大学病院国際医療部・准教授・森山智彦
九州大学病院消化管内科・助教・梅野淳嗣
九州大学病院消化管内科・助教・冬野雄太
共同研究施設及び
試料・情報の提供のみ
行う施設
理化学研究所生命医科学センター自己免疫疾患研究チーム・チームリーダー・山本一彦(解析)
日本大学医学部臨床試験研究センター・助教・山﨑慶子(統括:解析)

連絡先

この研究への登録を希望されない患者様は下記にご連絡下さい。

〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1-1 九州大学病院 病態機能内科(第二内科)
電話:092-642-5261(消化器研究室) FAX:092-642-5273
メール:yfuyuno@intmed2.med.kyushu-u.ac.jp
担当:九州大学病院消化管内科・助教・冬野雄太

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