九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)消化器研究室

当科における臨床研究および治療 CLINICAL CASE STUDY

炎症性腸疾患における血栓症の頻度と重篤化・死亡症例に関する全国多施設後方視的観察研究

臨床研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病院消化管内科では、現在炎症性腸疾患の患者さんを対象として、血栓症に関する「臨床研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2020年12月31日までです。

研究の目的や意義について

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患患者さんでは血管に血栓ができやすいと言われています。一般的には下肢の静脈に血栓が生じ、むくみや痛みを生じたり、無症状である方も多いとされています。しかし、下肢静脈から肺動脈に血栓が飛んでつまると肺塞栓症が起きたり、腸、心臓(冠動脈)や脳の動脈に血栓がつまると腸管虚血・壊死、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などが生じ、カテーテル治療や手術が必要となり、重症例では死亡する場合もあります。欧米ではこのように、炎症性腸疾患患者さんでは、静脈や動脈の血栓塞栓症の合併が多いとされており、わが国でも同様の傾向があることが、これまでの調査で明らかとなっております。また、血栓塞栓症が炎症性腸疾患患者さんの主要な死亡要因となっていることや血栓塞栓症を合併した炎症性腸疾患患者さんの死亡率が高いことが、欧米より報告されていますが、わが国では血栓塞栓症を合併した炎症性腸疾患さんが、どのくらいの頻度で重篤化しているか、死亡しているか、明らかとなっておりません。これらの実態を解明することで、どのような患者さんに血栓症の合併が多く、重篤化・死亡に至っているかの特徴と経過を把握し、どのような患者さんに血栓塞栓症重篤化・死亡のリスクがあり、血栓症の予防治療をするべきか、といった、わが国での炎症性腸疾患患者さんの診療において、非常に重要な研究結果が得られるものと考えております。
本研究は、わが国での炎症性腸疾患患者さんにおける血栓症の頻度や重篤化・死亡例の実態を全国調査することを目的としています。

研究の対象者について

九州大学病院消化管内科において2008年1月1日から2017年12月31日までに診療した炎症性腸疾患の患者さん404人を対象にします。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

今回の研究では九州大学病院を含めた全国の消化器専門、炎症性腸疾患専門施設に通院中の炎症性腸疾患の患者さんの血栓症の実態調査をさせていただきます。本研究は旭川大学医学部が研究の中心施設となり、全国の各施設の患者さんの情報が旭川医科大学に集められた後、解析されます。

〔取得する情報〕
血栓症合併数、重篤化・死亡症例の数、年齢・性別・病歴・治療法・血液検査所見や血栓症の発生部位や治療法、転帰(死亡を含む)

個人情報の取扱いについて

研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学・教授・北園 孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
研究対象者のカルテの情報を旭川医科大学へ郵送する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。

試料や情報の保管等について

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学において同分野教授・北園 孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

本研究に関する必要な経費はなく、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。

研究に関する情報や個人情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究機関

研究実施場所 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
研究責任者 九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成
研究分担者 九州大学病院消化管内科・助教・鳥巣剛弘
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学・大学院生・仁田畑 智紀
共同研究施設 代表施設:旭川医科大学内科学講座
研究代表者:消化器・血液腫瘍制御内科学分野 藤谷 幹浩

連絡先

この研究への登録を希望されない患者様は下記にご連絡下さい。

〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1-1 九州大学病院 病態機能内科(第二内科)
電話:092-642-5261(消化器研究室) FAX:092-642-5273
メール:nitahata@intmed2.med.kyushu-u.ac.jp
担当:九州大学大学院病態機能内科学大学院生 仁田畑 智紀

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