九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)消化器研究室

当科における臨床研究および治療 CLINICAL CASE STUDY

日本人炎症性腸疾患患者におけるCOVID-19感染者の多施設共同レジストリ研究

臨床研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病院消化管内科では、現在炎症性腸疾患の患者さんを対象としてCOVID-19感染に関する「臨床研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和4年3月31日までです。

研究の目的や意義について

現在、国際的に急速に蔓延している重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2(サーズ・コブ・ツー))、そして、その結果として生じるコロナウイルス病(COVID(コビット)-19)が、臨床現場における患者さんや医療従事者の混乱を招いています。高齢者やがん患者さんでは、COVID-19感染が悪くなりやすい、つまり、免疫機能低下は、感染悪化の1つのリスクになることが予測されています。しかしながら日本においては、COVID-19感染が、免疫の異常による病気(関節リウマチなど)やがん患者さんにどのような影響を与えるかは分かっておりません。さらに、呼吸器症状が注目されていますが、COVID-19患者さんの約20%で、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸症状を認める事が臨床的に明らかとなってきています。
炎症性腸疾患は若年の方に発症し、慢性的な腸管炎症を主体とする疾患です。炎症性腸疾患の病態はまだ完全には解明されてはいませんが、遺伝子学的背景、環境因子、免疫反応といった多種多様な要因が複雑にからみあって、発症につながっていると考えられています。1950年以降、日本においては炎症性腸疾患の患者さんの数が増加傾向となり、それと共に、これまでの治療が効かない患者さんも増加しつつあります。そのため、ステロイドを始めとした免疫機能を低下させる作用のある薬剤治療を必要とする患者さんも増加しています。従って、腸の炎症が病気の中心であり、さらに免疫機能を低下させる作用のある薬剤治療が中心の炎症性腸疾患患者さんでは、COVID-19の感染がその臨床経過に影響を及ぼす可能性が示唆されますが、どのような影響を及ぼすかは未だに明らかではありません。
COVID-19に感染した日本人炎症性腸疾患患者さんの情報を集めて、炎症性腸疾患患者さんにおけるCOVID-19感染率ならびにCOVID-19感染が患者さんの症状に及ぼす影響を明らかにします。このことは、COVID-19の発症予防やCOVID-19感染時の炎症性腸疾患の治療内容の適切化につながります。

研究の対象者について

九州大学病院消化管内科あるいは研究協力施設に通院もしくは入院中の炎症性腸疾患患者さん(潰瘍性大腸炎、クローン病、分類不能型腸炎、腸管ベーチェット病、単純性潰瘍)の中で、2020年1月1日から2021年12月31日までにCOVID-19への感染を認めた患者さんを研究対象者とします。なお、症状を伴わないもののCOVID-19への感染を認めた「無症状病原体保有者」も対象とします。
<選択基準>
・COVID-19に対する通院や入院が終了した患者さん
<除外基準>
・年齢基準は設けない
・本研究の参加を希望されない患者さん
・研究責任者が研究対象者として不適当と判断した患者さん
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

各施設の診療録から施設の研究責任者または研究分担者が調査項目の調査を行います。各施設における研究責任者または研究分担者は、得られた情報をエクセルファイルの「症例報告書」に入力し、札幌医科大学附属消化器内科学講座の担当者にパスワードでロックされ匿名化された「症例報告書」を電子メールで提供し、詳しい解析を行う予定です。

〔取得する情報〕
この研究に使用するのは、大学病院のカルテに記載されている情報の中から以下の項目を抽出し使用させていただきます。分析する際には氏名、生年月日などの研究対象者を特定できる情報は削除して使用します。また、研究対象者の情報などが漏洩しないようプライバシーの保護には細心の注意を払います。
・病歴: 年齢、性別、身長、体重、診断名、喫煙の有無、併存症(心疾患、糖尿病、喘息、慢性呼吸器疾患、高血圧、悪性腫瘍、脳血管障害、慢性腎疾患、慢性肝障害、その他)など 。
・炎症性腸疾患に関する事項:活動性、罹病期間、病型、治療内容、COVID-19感染中のIBD治療継続の有無、COVID-19感染中の炎症性腸疾患の増悪の有無など。
・COVID-19に関する事項:診断日、発症から診断までの日数、診断に至った検査法、感染経路、症状とその期間、肺炎の有無、治療内容、重症度/転帰(外来治療、入院治療、集中治療、死亡)、診断日から検査で陰性を確認するまでの日数。
・画像診断: 内視鏡的所見、レントゲン・CT検査所見など。
・臨床検査(血液):白血球、赤血球、血小板、総蛋白、肝機能、膵酵素、腎機能、炎症反応など。

個人情報の取扱いについて

研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野・教授・北園 孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
研究対象者のカルテの情報を札幌大学へ提供する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。

試料や情報の保管等について

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野において同分野教授・北園 孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、研究対象者の同意がいただけるならば、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えております。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
研究に関する必要な経費は厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」の公的研究費で賄われ、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。

利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報や個人情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究機関

研究実施場所 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
九州大学病院消化管内科
研究責任者 九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成
研究分担者 消化管内科・講師・鳥巣 剛弘
消化管内科・併任講師・梅野 淳嗣
国際医療部・准教授・森山 智彦
消化管内科・助教・川崎 啓祐
光学医療診療部・助教・藤岡 審
消化管内科・助教・冬野 雄太
消化管内科・助教・松野 雄一
共同研究施設 代表: 札幌医科大学医学部消化器内科学講座 教授 仲瀬 裕志
杏林大学医学部消化器内科学講座、いづろ今村病院消化器内科、大阪医科大学第2内科、大船中央病院消化器・IBDセンター、岡山大学病院IBDセンター、関西医科大学内科学第三講座、北里大学医学部新世紀医療開発センター・消化器内科、京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学、久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門炎症性腸疾患センター、慶應義塾大学医学部内視鏡センター、国立成育医療研究センター消化器科/小児IBDセンター、埼玉医科大学総合医療センター消化器・肝臓内科、佐賀大学医学部附属病院光学医療診療部、順天堂大学医学部附属順天堂医院小児科・思春期科、辻仲病院柏の葉消化器内科・IBDセンター、東京医科歯科大学臨床試験管理センター・消化器内科、東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科、東京女子医科大学医学部消化器・一般外科、東京大学医学部腫瘍外科・血管外科、東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科、兵庫医科大学病院炎症性腸疾患学講座内科部門、弘前大学大学院医学研究科・消化器血液内科学講座、福岡大学医学部消化器内科学講座、福岡大学筑紫病院外科、藤田医科大学病院消化管内科学、防衛医科大学校病院消化器内科、横浜市立市民病院炎症性腸疾患科、横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター、福岡大学筑紫病院外科、藤田医科大学病院消化管内科学、防衛医科大学校病院消化器内科、横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター

連絡先

この研究への登録を希望されない患者様は下記にご連絡下さい。

〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1-1 九州大学病院 病態機能内科(第二内科)
電話:092-642-5261(消化器研究室) FAX:092-642-5273
メール:matsuno.yuichi.819@m.kyushu-u.ac.jp
担当:九州大学病院消化管内科 助教 松野 雄一

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