当科における臨床研究および治療 CLINICAL CASE STUDY
消化管悪性リンパ腫におけるマイクロRNAの臨床的意義に関する研究
はじめに
消化管悪性リンパ腫に対し、抗がん剤や生物学的製剤による化学療法や手術、放射線療法、抗菌薬によるピロリ菌除菌など、組織型や病期に応じて様々な治療が行われていますが、一定の指針はまだ定められていません。病気の原因について、これまでにタンパクの設計図となる遺伝子の異常が多く調べられてきました。最近になって、タンパクに翻訳されない小さな遺伝子であるマイクロRNAが、多くの癌の発生や制御に重要な役割を果たしていると明らかになってきました。一部の悪性リンパ腫においてもマイクロRNAの発現の程度が予後と関連することが示唆されていますが、消化管に発生する多くの悪性リンパ腫におけるマイクロRNAの役割はわかっていません。この研究の目的は消化管悪性リンパ腫の腫瘍細胞におけるマイクロRNA発現異常が、病気の進行度、治療の効果や生命予後などの臨床像と関係があるのかどうかを明らかにすることです。
対象
1970年1月1日から2020年3月31日までに九州大学病態機能内科学(旧第二内科)あるいは消化管内科に通院もしくは入院された患者さんの中で、消化管(胃または腸)の悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、NK/T細胞リンパ腫)と診断された方400例を対象とします。
承認日以降に診断された方については診断後に説明させていただき、同意をいただいた方のみを対象とします。
本研究の対象者となることを希望されない方は、下記連絡先までご連絡ください。
研究内容
本研究は前向きの介入研究・後ろ向きの観察研究として実施されます。診断または治療のために内視鏡検査または手術の際に得られた消化管悪性リンパ腫の腫瘍細胞の一部を用いて、リンパ腫で最近関連があると報告されているマイクロRNA発現異常をマイクロアレイ解析やリアルタイムPCR解析で調べます。その際コントロール群として病変部以外の組織を用います。カルテを参照させていただき、臨床所見(診断時年齢、性別、浸潤臓器、病歴に関する情報、臨床病期、一般状態(performance status, B症状))、血液所見(血液ヘモグロビン、可溶性IL-2受容体、LDH、β2ミクログロブリン)、感染症の有無(ヘリコバクター、キャンピロバクター、C型肝炎ウイルス、各種寄生虫)、病理学的所見(リンパ腫の組織型、濾胞性リンパ腫では組織グレード)、治療(治療開始日、治療方法、効果不十分時の追加治療)、治療反応性や予後との関連を調べます。
なお、本調査に関する苦情等については、「問い合わせ先」もしくは受診された診療科までお申し出ください。また、個人情報の開示や訂正等を要求される場合には、受診された診療科までお申し出ください。 それによる不利益は生じません。
対象者が希望される場合は、研究計画書及び研究の方法に関する資料を入手または閲覧することができますので、下記連絡先までご連絡ください。
個人情報の管理について
本研究では個人情報漏洩を防ぐため、氏名、カルテ番号などの個人を特定できる情報を削除した上で、データの数字化などの厳格な対策を取っています。また、本研究の実施過程及びその結果の公表(学会や論文等)の際には、患者さんを特定できる情報は一切含まれません。
個人情報の取扱いについて
対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野・教授・北園 孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
研究期間
研究を行う期間は承認日より平成32年3月31日までです。
医学上の貢献
本研究により被験者となった患者さんが直接受けることができる利益はありません。この研究の結果によって、将来、消化管悪性リンパ腫の患者さんの診断や治療方法を決定する上で、重要な情報が得られる可能性があります。
データの二次利用について
この研究が適切に実施され、患者さんの人権が守られ、検査や診断の結果が正確に報告されているかを確認するために、他の医療機関の医療関係者やデータ管理者などが、あなたのカルテや検査記録を直接拝見して監査等を行うことがあります。また、本研究で得られたデータや試料を別の研究に2次利用する可能性がありますが、その場合は、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認を受けた上で利用します。この場合も、あなたから得られた試料や個人情報を出すようなことは一切ありません。あなたの病状や名前などに関する情報を含めプライバシーは厳重に守ります。
研究機関
研究実施場所 | 九州大学病院 |
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研究機関の長 | 九州大学病院長 |
研究責任者 | 九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成 |
研究分担者 |
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野 講師 江崎幹宏 九州大学大学院医学研究院形態機能病理学 教授 小田義直 九州大学大学院医学研究院保健学部門検査技術科学分野病態制御学 講師 平橋美奈子 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野 助教 鳥巣剛弘 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野 大学院生 河野真一 (研究計画書作成担当者) |
共同研究者 | 岩手医科大学内科学講座消化器内科消化管分野 中村昌太郎 |
研究事務局 | 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野 消化器研究室 |
連絡先
この研究への登録を希望されない患者様は下記にご連絡下さい。
〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1-1 九州大学病院 病態機能内科(第二内科)
電話:092-642-5261(消化器研究室) FAX:092-642-5273
メール:k-shin@intmed2.med.kyushu-u.ac.jp
担当:九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野 大学院生 河野真一