九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)消化器研究室

当科における臨床研究および治療 CLINICAL CASE STUDY

COVID-19ワクチンの炎症性腸疾患の再燃に及ぼす影響の調査

臨床研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院消化管内科では、現在潰瘍性大腸炎及びクローン病の患者さんを対象として、COVID-19ワクチンの炎症性腸疾患の再燃に及ぼす影響に関する「観察研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2022年6月30日までです。

研究の目的や意義について

本邦において、2021年2月よりCOVID-19ワクチンの接種が始まり、2021年12月には概ね8割程度の国民が2回の接種を終えていますが、いくつかの自己免疫性疾患において、新型コロナワクチン投与後に原疾患の病勢が再燃した症例報告が散見されています。一方で、自己免疫性疾患である潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患においては、COVID-19ワクチン投与後の有害事象に関する調査報告において、病勢の再燃率は2%と報告はあるものの、再燃した症例に関する具体的な検討はなく、詳細は依然として不明です。
 そこで今回我々は炎症性腸疾患において、COVID-19ワクチン投与が、原疾患の病勢の再燃に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、本研究を計画しました。
 炎症性腸疾患においては、しばしば生物学的製剤や免疫調整薬による治療を要し、健常人とは異なる免疫プロファイルとなっていることが少なくありません。今後もCOVID-19ワクチンの定期的な接種が必要となった場合に、本研究を行うことでワクチンが原疾患の再燃に及ぼす影響を明らかにしておくことは、医学的・社会的に重要な意義を持つと考えられます。

研究の対象者について

九州大学病院消化管内科に潰瘍性大腸炎及びクローン病で入院または通院されており、本研究への参加にご同意いただける患者さん300名ずつを対象とさせていただく予定です。
本研究に使用する情報の取得期間:許可日~2022年3月31日まで
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

この研究への参加に同意いただきましたら、問診及びカルテより以下の情報を取得します。
〔問診により取得する情報〕
・年齢          ・性別       ・身長、体重
・喫煙歴         ・腸管切除歴
・COVID-19感染歴     ・COVID-19接種歴、接種年月
・COVID-19ワクチン接種前1年間の炎症性腸疾患の病状、入院の有無
・COVID-19ワクチン接種前に用いていた炎症性腸疾患治療薬
・COVID-19ワクチン接種前後の消化器症状(排便回数、下痢、血便、腹痛、全身状態)の変化
・COVID-19ワクチン接種前後の腸管外症状(発熱、関節炎、痔瘻/肛門周囲膿瘍、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、口内炎、ぶどう膜炎)の変化
・COVID-19ワクチン接種前後の炎症性腸疾患治療薬の変化

〔診療録より取得する情報〕
・罹患範囲         ・臨床病型
・腸管合併症の有無,詳細  ・腸管外合併症の有無,詳細
・COVID-19ワクチン接種6か月以内の大腸内視鏡検査所見(該当例のみ)
・COVID-19ワクチン接種3か月以内の下記の血液検査所見(該当例のみ)
採血項目:白血球,ヘモグロビン,血小板,総蛋白,アルブミン,C反応性蛋白,血沈
〔解析について〕
潰瘍性大腸炎及びクローン病において、得られた情報からそれぞれワクチン接種後に病状が再燃した頻度を算出します。また、潰瘍性大腸炎及びクローン病それぞれにおいて、再燃した群と再燃しなかった群を比較検討し、様々な臨床項目(年齢や性別、生物学的製剤や免疫調整薬の有無など)との相関を検討します。

個人情報の取扱いについて

あなたの測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、あなたのお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。あなたと研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、あなたが特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野・教授・北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

試料や情報の保管等について

〔情報について〕
この研究において得られたあなたの問診や診療録の情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野において同分野教授・北園 孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られたあなたの情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、あなたの同意がいただけるならば、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えております。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。 本研究は問診及び診療録の情報を元に行われるため必要な経費はなく、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報や個人情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

研究機関

研究実施場所 九州大学病院消化管内科
研究責任者 九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成
研究分担者 消化管内科・講師・鳥巣 剛弘
九州大学病院国際医療診療部・准教授・森山 智彦
消化管内科・併任講師・梅野 淳嗣
国際医療部・准教授・森山 智彦
消化管内科・助教・川崎 啓祐
光学医療診療部・助教・藤岡 審
消化管内科・助教・冬野 雄太
消化管内科・助教・松野 雄一
九州大学大学院医系学府病態機能内科学・大学院生・吉田 雄一朗

連絡先

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。

〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1-1 九州大学病院 病態機能内科(第二内科)
電話:092-642-5261(消化器研究室) FAX:092-642-5273
メール:yoshida.yuichiro.050@m.kyushu-u.ac.jp
担当:九州大学大学院医系学府病態機能内科学・大学院生・吉田 雄一朗

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