九州大学大学院 病態機能内科学(第二内科)消化器研究室

当科における臨床研究および治療 CLINICAL CASE STUDY

炎症性腸疾患患者における5-ASA不耐の現状:多施設共同後ろ向き研究

観察研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。その一つとして、九州大学病院消化管内科では、現在、潰瘍性大腸炎及びクローン病の患者さんの中で、5-アミノサリチル酸製剤(以後5-ASA製剤)不耐の方の実態およびそれに関連する因子を明らかにする「臨床研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年12月31日までです。

研究の目的や意義について

潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis; UC)とクローン病(Crohn`s disease; CD)に代表される炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease; IBD)の患者数は増加傾向であり、その多くが継続的な内科的治療を必要とします。5 -アミノサリチル酸(5-Aminosalicylic acid; 5-ASA)製剤は軽症?中等症の炎症性腸疾患に対する基本治療薬であり、半数以上の症例において5-ASA製剤のみによる寛解導入が可能とされています。一方で、5-ASA製剤では一部の患者において発熱や下痢の増悪といった「不耐症状」が問題となることがあります。これらはIBDそのものの増悪と類似した症状を呈することがあるため、治療上の問題の一つとなっています。
5-ASA不耐には明確な定義が存在せず、様々な症状が報告されています。典型的には開始後早期、多くは2週間以内に、急な発熱、腹痛や下痢など腹部症状の悪化、関節痛、頭痛などが認められたら、5-ASA製剤による症状の悪化(5-ASA不耐)を考慮します。そのような場合には5-ASA製剤を中止しますが、それ以後も発熱や下痢が持続する場合には、原疾患の増悪の可能性などもあり、実際に不耐であったか判断に苦慮します。5-ASA不耐患者はより濃厚な治療や外科的治療が必要となる可能性が高まるとの報告もありますが、本邦における多施設での報告は少ないのが現状です。
そこで、今回九州大学病院消化管内科では、潰瘍性大腸炎及びクローン病に使用される5-ASA製剤に対して不耐を示す患者さんの実態及びそれに関連する因子を解明することを目的として、本研究を計画しました。本研究は福岡大学主導の多施設共同研究であり、九州大学からもデータを提供いたします。本研究を行うことで5-ASA不耐患者の実態及びそれに関連する因子が明らかになり、より最適化したIBD診療が可能になると考えます。

研究の対象者について

2000年1月1日から2022年12月31日までの間に九州大学病院消化管内科へ通院歴のある潰瘍性大腸炎もしくはクローン病患者のうち、5-ASA製剤の投与が行われ、5-ASA不耐もしくは5-ASAと因果関係があると考えられる有害事象をきたしたと判断された患者さんを対象とします。後日申し出により登録中止を希望された場合は登録中止とします。なお、登録中止とした場合には、以後の追跡調査も行いません。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。

 〔取得する情報〕
<患者基本情報>年齢、性別、身長、体重、最終の情報確認日
<診断情報>発症日、発症年齢、初診日、診断日、診断名、罹患部位、腸管合併症の有無・詳細、
腸管外合併症の有無・詳細、生活歴、家族歴
<臨床情報>臨床症状の有無・詳細、血液検査所見(白血球数、白血球分画、ヘモグロビン値、
ヘマトクリット値、血小板数、血沈、C反応性蛋白(CRP)、総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)、
尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ア
ラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、DLST試験成績)、消化管内視鏡検査所見、放射線・
生理画像検査所見、病理組織所見
<治療情報>5-ASAの種類・用量・投与期間、5-ASA以外の治療法、5-ASA不耐の出現時期、5-ASA
不耐の臨床症状、5-ASA不耐以外の有害事象、手術歴、入院歴、悪性腫瘍合併の有無、内視鏡的
治療の有無

取得した情報に対し、匿名化を行い個人が特定されないようにした上で、福岡大学医学部消化器内科学へ送付します。
他の共同研究機関からも同様にデータを収集し、データベースを作成します。
データベースの情報を用いて統計学的解析を行い、以下の評価を行います。
 主要評価項目:5-ASA不耐患者の臨床経過
 副次的評価項目:5-ASA不耐患者の背景、5-ASA製剤の種類や用量による不耐の有無
この研究への参加はあなたの自由な意思で決めてください。同意されなくても、あなたの診断や治療に不利益になることは全くありません。
また、いったん同意場合でも、あなたが不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができます。同意を撤回されたい方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、下記の相談窓口までご連絡ください。
その場合は、収取された情報は廃棄され、取得した情報もそれ以降はこの研究目的で用いられることはありません。ただし、同意を取り消した時にすでに研究結果が論文などで公表されていた場合には、完全に廃棄できないことがあります。

個人情報の取扱いについて

研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野・教授・北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究対象者のカルテの情報を福岡大学へ郵送する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。

試料や情報の保管等について

この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野において同分野教授・北園孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は研究室への寄付金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082

研究に関する情報や個人情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 また、この研究では、学会等への発表や論文の投稿により、研究成果の公表を行う予定です。

研究機関

研究実施場所 九州大学病院消化管内科
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野
研究責任者 九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成
研究分担者 九州大学病院消化管内科・講師・鳥巣剛弘
九州大学病院国際医療診療部・准教授・森山智彦
九州大学病院消化管内科・併任講師・梅野淳嗣
九州大学病院消化管内科・助教・川崎啓祐
九州大学病院光学医療診療部・助教・藤岡審
九州大学病院消化管内科・助教・松野雄一
九州大学病院消化管内科・医員・長末智寛
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学・大学院生・才木琢登
共同研究機関等

福岡大学医学部消化器内科学・教授・平井郁仁(小玉正太)
芦屋中央病院・消化器科・櫻井俊弘(櫻井俊弘)
北九州市立医療センター・消化器内科・秋穂裕唯(中野徹)
久留米大学病院・消化器内科・竹田津英稔(志波直人)
聖マリア病院・消化器内科・光山慶一(谷口雅彦)
産業医科大学病院・内視鏡部・芳川一郎(田中文啓)
製鉄記念八幡病院・消化器内科・中村滋郎(古賀徳之)
戸畑共立病院・消化器病センター・宗祐人(今村鉄男)
松永病院・外科・二見喜太郎(松永英裕)
福岡大学筑紫病院・炎症性腸疾患センター・髙津典孝(河村彰)
佐賀大学医学部附属病院・消化器内科・江﨑幹宏(野口満)
嬉野医療センター・消化器内科・森﨑智仁(力武一久)
五島中央病院・消化器内科・竹島史直(竹島史直)
長崎大学病院・消化器内科・松島加代子(中尾一彦)
長崎医療センター・消化器内科・中島悠史郎(八橋弘)
井上病院・消化器内科・東俊太朗(吉嶺裕之)
大分大学医学部附属病院・消化器内科・村上和成(三股浩光)
石田消化器IBDクリニック・石田哲也(石田哲也)
大分赤十字病院・消化器内科・上尾哲也(福澤謙吾)
熊本大学病院・消化器内科・直江秀昭(馬場秀夫)
鹿児島大学病院・消化器内科・上村修司(坂本泰二)
いづろ今村病院・消化器内科・大井秀久(常盤光弘)
鮫島病院・理事長・鮫島由規則(鮫島由規則)
宮崎大学医学部附属病院・消化器内科・山本章二朗(帖佐悦男)
潤和会記念病院・外科・佛坂正幸(岩村威志)
琉球大学病院・光学医療診療部・外間昭(大屋祐輔)
浦添総合病院・消化器病センター・金城福則(福本泰三)
那覇市立病院・消化器内科・豊見山良作(外間浩)

連絡先

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。

〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1-1 九州大学病院 病態機能内科(第二内科)
電話:092-642-5261(消化器研究室) FAX:092-642-5273
メール:saiki.takuto.422@m.kyushu-u.ac.jp
担当:九州大学大学院医学系学府病態機能内科学・大学院生・才木琢登

Page Top