大屋祐一郎先生(H25)の大学院での研究成果第2弾がJ Neurol Sci誌に掲載されました!

大屋祐一郎先生(H25)が大学院で行った研究論文の第2弾がJ Neurol Sci誌に掲載されました!

Modification of the effects of age on clinical outcomes through management of lifestyle-related factors in patients with acute ischemic stroke

J Neurol Sci 2022 Feb 15;446:120589.

 

Fukuoka Stroke Registryに登録された脳梗塞患者を対象に「脳梗塞発症後の機能転帰と年齢の効果」について検討した内容です。

これまでの多くの既報と同様に加齢と短期機能転帰不良は関連していますが、

脳梗塞発症3ヶ月後の機能転帰不良への年齢の効果は性別、BMI、高血圧、糖尿病によって修飾されることを見出しています。

高齢になるほど、女性やBMI<23の患者では加齢が機能転帰不良に及ぼす影響が有意に強くことを、

一方で年齢が若くなるほど、高血圧や糖尿病の有病者では若年であることの機能転帰に及ぼす良好な効果が有意に弱まることを発表いたしました。

 

 

高島正光先生(H25)の学位予備審査が開催されました

1/30に高島正光先生(H25)の学位予備審査が無事終了いたしました。

 

低用量SGLT2阻害薬は血糖低下作用を伴わないペリサイト保護作用によりマウス脳梗塞の傷害を改善する

Low-dose sodium-glucose cotranspoter 2 inhibitor ameliorates ischemic brain injury in mice through pericyte protection without glucose-lowering effects 

 

SGLT2阻害薬は腎臓・心臓・肝臓保護作用を有することが示されてきています。

一方で、近年のメタ解析ではSGLT2阻害薬は脳卒中発症のリスクを上下しないことが示されていますが、脳卒中後の機能的・神経学的転帰に対する有益性についてはまだ臨床的にも基礎実験的にも示されていません。また脳におけるSGLT2の発現についてはまだ十分に検証されておらず、そしてSGLT2に関するこれまでの研究の多くは、糖尿病を合併するげっ歯類を用いたり、治療量のSGLT2阻害薬を用いたりしているため血糖値への影響を無視できないとの問題点がありました。

そこで非糖尿病マウスに対して脳梗塞モデルを作製する前から血糖値に影響を及ぼさない低用量のSGLT2阻害薬を投与して、SGLT2阻害薬が急性期脳梗塞に及ぼす影響について検討しました。また、脳梗塞に対するSGLT2阻害薬の作用機序について、SGLT2の脳内における発現と機能を含めて検討しました。

その結果、

1)脳梗塞モデルマウスにおいて低用量ルセオグリフロジンの前投与により、脳梗塞体積が縮小し、血液脳関門の破綻が減弱した。

2)SGLT2は脳血管ペリサイトに発現し、脳梗塞周囲および梗塞巣内での発現が上昇した。

3)ルセオグリフロジンの前投与によって脳梗塞後に生じるペリサイトの喪失が抑制された。

4)ルセオグリフロジンはペリサイトにおけるAMPKα-PGC-1α経路を活性化し、ミトコンドリア生合成を促進し、虚血耐性をもたらした。

を明らかにしたことを報告しました。

低用量SGLT2阻害薬を脳梗塞発症前に投与することは非糖尿病患者においても脳の傷害や神経機能障害を軽減する新たな予防戦略となるのかもしれません。脳梗塞症状の軽減効果がヒトにおいても本当にあるのか、今後のさらなる研究が期待されます。

 

主査;小川佳宏 教授(病態制御内科学)

副査:久場敬司 教授(薬理学)

副査:吉本幸司 教授(脳神経外科学)