脇坂祐毅先生(H30)が第340回日本内科学会九州地方会で専攻医賞を受賞しました!

脇坂祐毅先生(H30)が第340回日本内科学会九州地方会で専攻医賞を受賞しました。

 

タイトル:脳アミロイドアンギオパチーに関連した一過性局所神経徴候と考えられた頻回な一過性右上肢脱力の症例

<抄録>【症例】75歳,女性【主訴】右上肢の一過性の脱力【現病歴】左小脳半球血管芽腫に対する手術歴がある.X年4月に1時間程度持続する右上肢の脱力が出現し近医で抗てんかん薬が開始された.以後も右上肢の脱力を繰り返し同年5月に当科を受診した.来院時には認知機能を含め明らかな神経学的異常所見を認めなかった.頭部MRIでは拡散強調画像(DWI)で両側前頭頭頂葉皮質下白質に点状の高信号域が散在し,FLAIR画像では左中心溝に沿ったくも膜下出血を認めた.脳動脈瘤・血管奇形・主幹動脈病変・塞栓源を認めず,脳波でてんかん波も明らかでなかった.T2*強調画像で著明な脳表ヘモジデリン沈着を認め脳アミロイドアンギオパチーに関連した一過性局所神経症候(TFNE:Transient Focal Neurological Episodes)と診断し,抗血栓療法は行わず血圧を厳格に管理する方針とした.【考察】TFNEは脳表ヘモジデリン沈着に関連した部分てんかんや血管攣縮に伴う虚血などが原因と考えられており,脳皮質下出血のリスクが高い.高齢者に一過性神経症状を生じT2*強調画像等で脳表ヘモジデリン沈着や微小出血を認めた場合には,TFNEの可能性を考慮し抗血栓療法の導入を慎重に検討すべきである

 

脳アミロイドアンギオパチーに関連した一過性局所神経徴候 (transient focal neurological episodes: TFNE) の概念は少しずつ広まってきています。また脳アミロイドアンギオパチーによる脳微小出血巣辺縁にMRI-DWIで高信号を示すことがありますが、これは出血後急性期のオキシヘモグロビンの粘稠度による拡散制限を示しているとされています。しかしMRI-DWI高信号を脳梗塞と判断したりTFNEをTIAと判断して抗血栓療法を開始すると脳出血を生じさせてしまう危険性があります。そのためTFNEについて脳卒中専門医は熟知しておいたほうが良いかと思われます。

<参考文献>

1) 村上綾ら. 拡散強調画像上の皮質下白質高信号と皮質脳表ヘモジデリン沈着性を伴う一過性局所神経徴候を繰り返した脳アミロイドアンギオパチーの1例. 臨床神経 2021;61:874-877

2) Smith EE, et al. Cerebral amyloid angiopathy-related transient focal neurologic episodes. Neurology 2021;97:231-238

大屋祐一郎先生(H25)の学位予備審査が開催されました

1/11に大屋祐一郎先生(H25)の学位予備審査が無事終了いたしました。

Fukuoka Stroke Registryに登録された18歳以上の急性期脳卒中連続症例の臨床情報を用いて

血管危険因子や脳卒中の病因、とくに虚血性脳卒中の原因について

若年成人(年齢≤50歳)と非若年成人(年齢>50歳)の間にどのように異なっているかを検討した内容を発表しました。

 

若年成人と非若年成人による脳梗塞の病院学的特徴と差異:多施設共同観察研究

Causes of Ischemic stroke in young adults versus non-young adults: A multicenter hospital-based observational study

 

・高血圧・糖尿病・脂質異常症などの血管危険因子は、非若年成人より若年成人で頻度は低いが、その合併の頻度は若年成人であっても加齢とともに増加した。

・喫煙、飲酒、肥満といった生活様式関連危険因子は、非若年成人より若年成人で高頻度に認めた。

・若年成人では、心原性脳塞栓症および大血管アテローム硬化の頻度は低く、その他の原因および原因不明が高頻度であった。小血管閉塞や大血管アテローム硬化は若年成人の間においても加齢とともに頻度が増加した。

・一部の高リスク塞栓源(心房粘液腫、拡張型心筋症、心内血栓)および中リスク塞栓源(心房中隔欠損症、非細菌性血栓性心内膜炎、卵円孔開存、左室壁低運動)は若年成人で頻度が高く、かつ、加齢によりその頻度が減少した。

・いくつかの稀な原因(血管疾患:可逆性脳血管攣縮症候群・もやもや病・その他の血管疾患・動脈解離・脳静脈血栓症、血液疾患;抗リン脂質抗体症候群・プロテインS欠乏症)は若年成人で高頻度に認め、加齢によりその頻度が減少した。

 

主査;二宮利治 教授(衛生・公衆衛生学)

副査:吉本幸司 教授(脳神経外科学)

副査:磯部紀子 教授(神経内科学)